品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

検査員の製品合格にたいする評価について

KYBでの免振装置の検査不正についてですが、検査員は一人しかいなかったそうで、
検査員の評価というのが、合格数をどれだけ出したか、というものだったそうです。
これは、製造関係の者に言わせれば、検査員にも、納期・製品品質の向上にも
関心を持ってもらい、また協力してもらう一石二鳥の方法だと思われるかも
わかりません。
 しかし、これが品質不正に走らせる遠因になったのでは、と思います。
 私に言わせれば、検査員といえども、一会社員であり、プレッシャーにも
弱いものです。
ましてや、報酬にも関わるとなれば、ただでさえ合格させよう、という気持ちが働く

わけで、品質不正へと動いた面もあると思います。
 私は経験がないのですが、以前に品質管理部が製造部に吸収されたことがあるよう

 です。
それは、品質管理部長が製造部長も兼ねることとなり、製造部内に品質管理課として
配置されたとのことです。
 結果はどうなったかというと、客先からの品質苦情が増えてきたそうです。
 検査の判定基準はあるわけですが、合格として出荷されていく製品の品質が下がってきたそうです。
製造部内でのプレッシャーにより、段々と検査が甘くなっていたのでしょう。
 それから、品質管理部として、元通り、独立させることで、苦情も減少していったとのことです。

 また、関連会社でのことですが、新しい製品の設計をするものがいなかったため、
品質評価を行っていたものが、たまたま新製品関連の技術に詳しかったため、設計と
品質評価も兼ねることになりました。
 結果、締め切りが迫ってくると、量産への評価で確認漏れがあり、量産後に大きな

苦情が発生してしまいました。
 納期などで追い込まれると、本人が設計した製品の評価は甘くなったのかもわかり

ません。
 私の教訓としては(他山の石ですが)、設計者と評価者は分けるべきだということ
です。
 設計者と評価者が兼ねる場合は、その場に応じて頭を切り替えればいいのだ、と
いう意見もありましたが、人間、なかなか簡単に切り替えれるものではありません。

 製品検査時に、不良が増えると、設計変更を検討しないといけないな、と思うのでしょうが、そう思いながら検査をするだけで、判断が思わず甘くなってしまうのではないでしょうか。

 私は、品質管理、品質保証を行うものは、設計部門、製造部門、営業部門などから
独立して、プレッシャーを受けないようにすべきだと思います。
碌な結果にならないというのが、感想です。

品質管理、品質保証担当者が、製品や部品の合格率向上に検査段階で貢献できることはほとんどありません。検査される前(最終組み立て前)であればアドバイスできることがあるのも事実です。また、設計検証段階で言えることも多々あるかと思います。

しかし、形になってしまった製品や部品を前にしてしまうと時すでに遅し、なのです。

その時点で言えることはほとんどありません。言えることは、「合格あるいは不合格」です。そこで合格率に貢献しないと評価を上げないよ、というのは”嫌がらせ”としか思えません。設計者、製造担当者が設計検討時点でのアドバイスを聞いてくれたか、量産前の試作品検査でのアドバイスを聞いてくれたかどうかの結果が、量産品の合格率なのですから。また、量産ラインでの工程品質監査でのアドバイスを聞いていただければ、次の量産ロットでの合格率は向上する可能性はあります。しかし、繰り返しになりますが、検査時点で言えることはありませんし、「最後になって、合格率向上に協力してよ!」と言われても困ってしまうわけです。

 でも時々、製造部門などの管理職に協力しようという品質管理部門の管理職を見か
けることもあるのですが、そういったことをどこまで理解しているのでしょうか。また部下の努力をどう評価しようとしているのでしょうか。