品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

データを把握する重要性

 データを把握するのは重要だ、とよく言われます。言われるところは、事実の確認なわけです。
ただ、言われる程、簡単ではありません。
 データを把握するのはなかなか手間もかかり、真偽を確認することも大変です。
さらに、大事なことがあります。そのデータが、どれくらいの位置に属するものかを捉えることです。
 例えば、先日、現在の内閣の支持率が48%だと報道されていました。この数字だけ知らされた人が、高いと思うのか、低いと思うのか。
 また、以前より上がったのか、下がったのか。
 それらの付随するデータがないと、正常な判断が出来ません。正常な判断が出来ないということは、データを正常に把握できないということです。
 余談ですが、普段報道されるニュースの中で、解り易いデータはあまり見かけませんね。逆に言うと、正常に判断しにくいデータを流して、報道している側に誘導するために、理解しにくくしているのでは、と勘繰るニュースも見かけます。
 データを示すのは、事実の確実性を高めるためだと思うのですが、ただ、事実の数字を示すだけでは相手に伝わりにくいものです。
 そういう目で見ていると、通常のニュースで事実を報道しているものがあるのかどうか、判断に困ります。
 しかしながら、品質管理という観点から考えると、そういうことでは困るわけです。事実をありのままに捉えて、データが偏っていないことを確認して、伝える相手(上司、関係者、顧客)に理解できるような形で渡し、理解して貰う。これが出来て初めてデータを把握した(担当者だけでなく、関係者全員が)といえるわけです。
 普段、このような過程で正確なデータ取りをして、満足できる精度でデータを取り、勿論、精度のトレーサビリティも取れている。さらに、データの意味するところを相手に理解していただく。
 こういった業務を完璧に出来るようになれば、100点満点なのですが、現実はなかなかその通りにはいかないものです。日常の仕事では、反省することもあるのですが、新聞やテレビは、とても納得できないデータ(悪いデータというのではなく、こちらから見て良いも悪いも判断できない)が氾濫しているように思います。もうすこし、確認できるような資料なり分献なりを、どこかのサイトなりで見れればな、と思ったりします。そうすれば、データを本当の意味で理解できるし、把握できるのになあ、と思ってしまう今日この頃です。

 こうして、相手にデータを把握していただく(理解して頂く)ことはとても重要です。逆に言えば、理解して頂けないと、相手には伝わりません。

 

 

 

目的のない無駄取りは無駄

 無駄をなくそう、という意見は正論です。
一見、正論なので反対しにくいのですが、目的のないムダ取りは効果がすくないですし、効率の非常に悪いものです。
 以前に、同僚の中に無駄取りに執着する人がいて、苦労しました。「5S活動」などの際には、やたら無駄(無駄なもの)を指摘して、廃棄しようとするわけです。確かに「5S活動」でも基本は「整理」(要らないものを捨てる)です。要らないものを捨てて、効率よく仕事をしよう、ということです。考え方はあっているので、反対しづらい
わけです。当時の私達も「5S活動」というものをあまりわかっていなくて、なんかおかしいな、と思いながら彼のいうことをある程度聞いていました。彼が「5S活動」の推進役であったこともあり、彼のいうことは正しいことなのだろうと思って従っていたわけです。しかし、そのうち彼の指示に拍車がかかってきて、段々エスカレートしてきました。あまり使用していない備品とか、古い工具などをどんどん廃棄しようとしてきました。ここにきて、メンバーから文句がでてきました。「それは、あまり使わないけど、暮れの時期には使用するから、廃棄されたらこまる。」とか、「君は知らないかもしれないけど、僕の担当の業務ではたまに使用するから、廃棄されたら困る。」など。
 要するに、彼の個人的な判断で「要/不要」を決めて実行しようとしていたわけです。
  なんでもそうですが、何かを判断しようとする場合は、判断の基準を決める必要があります。それはみんなで意見を出し合って、みんなで納得して決めるべきものです。小集団活動のリーダーであっても、個人的に決めていいものではありません。
 また、私達も、面倒くさいので、彼に任せっぱなしにしていたこともあります。彼も、メンバーが相談に乗ってくれないこともあり、一人で決めてしまったこともあるのでしょう。
 しかしながら、目的をしっかり決めて、それに合わせた判断基準を決めないとみんなの意見が食い違ってくるのは当然です。
 彼は、兎に角、職場の無駄を取り除けば、業務効率が改善されると考えていたようです。
 ただ、職場の無駄といっても、山のようにあるわけで、目的に沿って、効果的なものから対処していかないと、効果もなかなか現れないわけです。それこそ、無駄をせっせと排除しているつもりが、その行為そのものがほとんど無駄に終わっている(厳密にいうと無駄ではなく、無駄に近いものになってしまっている)わけです。
 下手をすると、必要なものを捨ててしまって、再度、購入しないといけないという馬鹿なことにもなりかねないわけです。
 そういう意味で、無駄取りひとつを取っても、
 
 目的を決め
 行動の適否の判断基準を決めないと
 
 正常な活動は出来ないわけです。
 

品質改善は一生仕事

 品質改善は一生の仕事である、と言われます。
少し大げさではないか、と思ったこともあります。

品質管理部門にずっといるかどうかもわからないわけですし。

しかし、品質管理の仕事を行っている限りは、とことんこの仕事をやり遂げるべきでしょう。

しかしながら、改善を行っていくと、同じやり方では、限界がきます。
もうやることがない、と思われてくるのです。実際、これ以上どう進めたらいいのかわからなくなるわけです。
 では、どうすればいいのか。どう改善しらいいのか。
考え続けることしかないような気がします。
そこで、今までと同じやり方の方向で考えていると、良いアイデアはなかなか出てきません。
今までのやり方を置いておいて、考え続けていると、「こうすればいいんじゃないか。」というアイデアが浮かんでくるものです。
 いままで改善したと思うところも、再度見直してみると、別の改善のアイデアが出てくるものです。
 品質改善は製品開発に通じるところがあるかもわかりません。製品開発は常に、より良いものを市場から求められます。これは、以前に、新製品の図面が流出して問題になったことがありました。
 この問題自体は、協力会社のセキュリティの甘さから発生したもので、セキュリティの見直しを行い、対策がとらえました。しかしその際、技術担当役員(オーナー一族の人でした)の言葉には、びっくりしました。「情報は流出しないように、セキュリティはしっかり守るべきだ。しかし、真似られても、
それより先に、新製品を開発していけばいいんだ。」と。この強気というのか、ポジティブというのか、その考え方にびっくりしたことを憶えています。
 新製品を出した瞬間から(本当は出す前から)、もっと良いものを考えているべきなのです。そして、他の追随を許さない、ダントツの開発力を目指すべきなのです。
 品質の改善も同じだと思います。品質の改善を行ったら、すぐに(または、その改善の途中から)さらなる改善の準備をしているべきなのです。そうしないと、他社に後れを取ることになりかねません。
 不断の改善を行うと同時に、スピードも伴うものです。時間を掛けていては競争に負けてしまいます。
 つまり、現状に満足するということは、進歩を拒否するということです。これでいいと思ったときから停滞が始まるわけです。
 ではどうするのか。常に、勉強だと思います。より新しいやり方。新しい技術。新しい材料。。。
 勉強するべきことは、無限に近くあることでしょう。しかし、掛けられる時間は限られています。
 考えられる中で、より効率的な方法で勉強し、改善の方向をを常に探っていくべきなのだと思います。
 
 すこし、説教染みた話になってしまいましたが、品質改善は一生仕事という考えで行うべきなのだろうと思っています。
 

 

 

問題解決の方法

 製造工程で不具合が発生した場合や苦情が発生した場合などは、対処する方法を関係者で考え、応急的な処置を直ちに行います。至急に行う必要があることがほとんどだからです。
 そして、一応の対処が終わった後に、この問題がなぜ発生したのか、今後起こさないためにどうするのかを検討し、取り組んでいきます。
 その際に、通常はQC的問題解決法を使うことで、効率的に進められるとされています。
QC的問題解決法の進め方は次のようになります。

1.気にしている問題を散り上げます「テーマの選定」
2・問題を層別して重要な問題点を浮かび上がらせます「現状の把握」
3.どこまで問題を解決するのかを決めます「目標の設定」
4.問題の原因を追究します「要因の解析」
5.原因に対する対策を決めます「対策の立案」
6.対策が目標や目的により良く合うようにPDCAを回します「対策の実施」
7.効果があうるかどうかを確認します「効果の確認」
8.問題が再発しないように歯止めをかけます「標準化と管理の定着」

 それぞれの項目が大事なのですが、QC七つ道具などを使って吟味をしていくことに
なります。
 「現状の把握」ではグラフなどを使って、細かく吟味し、問題点を浮き彫りにしていかないといけません。
 「目標の設定」では、まず目標の達成期日を決めて、そこから目標値を決めることになると思います。
 「要因の解析」がなかでも、とても重要です。不具合結果に影響を与えていると思われるいくつかの要因をあらいだします。ここでは細かく解析する必要があります。その中でメインとなる要因をいくつか選び出します。メインとなる要因とデータ(実験や測定データから)との関連を検証します。
 「対策の立案」では、メインとなる要因に対する対策を考えます。次に、対策案について効果や実現性、コストで評価します。
 「対策の実施」では、対策を実施するために実行計画を立てます。その際、%W1Hで考えると抜けがなく実行計画を立てることができます。
 「効果の確認」では、対策を実施した結果、実績を確認して、達成度を確認します。目標未達成の場合は問題を探し出します。PDCAを回すことになると思います。
 「標準化と管理の定着」では、標準書やマニュアルを作成することになると思います。そして、それらを使って、教育や訓練を行います。
 また、維持されていることを確認するために、管理項目を決めて、モニターしていくことになると思います。
 
 こうして、問題を解決していくのが、一般的なやり方です。
 

品質改善で変えていいものと変えてはいけないものと

 改善で、変えていいものと変えてはいけないものがあるといわれます。
変えてはいけないものとは、企業が絶対守らなければならないと考えているものでしょう。
 絶対に変えてはいけないものとは何でしょう?それは、品質であったり、安全であったり、コアコンピタンスであったりと、色々あると思います。要するに、品質の改善という目的のために、以上のものを変えてしまっては何をやっているのかわからないという結果になってしまうわけです。ただ、この判断が難しいものでもあります。
以前に、苦情率は少ないのですが、使用中に不具合を起こす可能性のある部品がありました。衝撃に弱い部品で、なおかつ破損しても現象として不具合が出るまでに時間のかかるものでした(数か月はかかるもの)。そして、製造工程でも、扱いが難しいもので、同じように破損しても、不具合現象が発生するまでに時間がかかるものでした。結果的に、出荷前にチェックすることが、難しい(事実上、我が社では発見が不可能でした)ので、市場に出てから、苦情として返ってくるまで、解らないものでした。
(当然ながら、出荷時に動作チェックはしており、動作としては合格品を出荷しています)
 このように、我が社としては、完全に把握できないということで、私が担当しているときに使用をやめました。結果的に、若干ですが、苦情率も削減できました。
 ところが、私がその製品の担当を変わってから、2年程した後に、別の製品で、その問題の部品をまた、使用し始めたということを聞いて、関係者に理由を聞いたところ、仕様上、どうしてもその部品を使わざるを得なかったのだということで、苦情率もそんなに変わらないから、いいのじゃないかということになったとのことでした。
 私としては、変更に当たっては色々な試験や検討を行って決めたことであり、納得できなかったのですが、後の祭りであり、もう意見は聞いて貰えませんでした。
  この製品は、別の問題が発生していて、そちらの苦情でてんやわんやしていて、小さな苦情率の差などは、あまり聴いていただけなかったのもあります。
 しかし、私からすると、品質の劣るものを復活させるということには、
 (私の担当ではなかったというものの)納得しにくいものがありました。
 確かに、品質上、劣るといっても小さな差なので、我慢して使用するということもありかな、ともいえるのですが、この部品は、損傷の結果が時間的に遅れて表れるもので(数か月くらいで)、また、原因も突き止めにくいものなわけです。また、製造側でも完全に出荷時点で見つけきれないものなわけで、品質管理担当者としては、再使用はやめてほしいものでした。新製品では、使わざるを得なかったといえばそうなのかもしれませんが、別の部品を検討して欲しかったというのが、私の本心でした。ま、企業としての決断がそうであったわけで、私としては、もう、どうこういえるもの
ではなかったわけですが。
 このように、変えてはいけないものも、人により意見が分かれることもあり、最後は上司の決断で決まるものです。それも、状況などで変わるものでもあるでしょう。

 

品質改善での標準

 改善か改悪かわかるのは、標準があるからだという話があります。
改善とは、何かを変えるということ(通常は良いと思われるほうへ変えること)なわけです。
良いと思っているほうへ変えるためには、標準と比較して確かに良い変更だと判断する必要があります。
標準がなければ、標準を決める必要があります。
 Aという部品を製品に組み付ける順番を変えたほうが、不良品が減りそうだと考えた場合、標準となる組み付けの順番があるわけです。それを変えて、不良率が向上した場合、新しい順番での組み付け方法を標準として、設定し直します。
 品質改善を行う際に、一から最善の方法を考案して、創り出すことは稀です。そういことがないではないですが、通常は、現状のやり方の悪いと思う部分を改良して良い方向に持っていくということを行うわけです。そこで、現状というのは、大抵の場合、標準の方法なわけです。
 現状の方法(標準方法)で行っていて、問題が起きるから、改善を考える。問題が起きるのは、多くは、状況の変化による場合が多いものです。
〇作業者が変わった。
〇使用する部品が変わった。
〇使用する設備が変わった。
〇コストを削減する要請があった。
〇今より品質をアップする必要が出てきた。

 等々。
 このような、状況の変化に対応するために、現状より良い方向への変化を検討し、改善方法を創出するわけです。
 品質改善というのは、このように、PDCAの繰り返しなのかもわかりません。
  但し、ここで基本にすべき標準があやふやなことが多いような気がします。
 現在の工程状況を明示しているべきQC工程表が、最新の内容に更新されていないとか、作業標準書の内容が、やはり更新されていないとか。こういったベースとなるべき標準の内容がはっきりしないことがあります。これでは、確かな検討・改善ができないわけです。勿論、詳しく調べて現状を洗い出すわけですが、それだけでも、相当な時間を浪費してしまうことが多いものです。
品質に限りませんが、文書や記録は間違いや抜けがあってはいけません。それは次のステップに進むための足掛かりになるものだからです。地味で、手間のかかることですが、こういう仕事は大事です。
 こういった改善業務は終わりがありません。それは、なかなか100%不具合をなくせないということもありますが、先ほど説明した状況変化が、結構発生することも大きいわけです。
 一つの状況変化に対応できたと思ったら、次の変化が起きている。そこで、それに対応する準備をして、実行に移す。
 品質改善とは、こういった繰り返しになることが多いものです。しかし、こうした中で,部署の目標に向けて進んでいく、また企業の目標に合わせて進んでいくというのが改善業務だろうと思っています。

 

設計品質について

 品質には、「設計品質」と「製造品質」があると言われます。
「設計品質」とは、顧客にとって魅力ある性能や機能やデザインを具体的に考え、これをあらわした仕様書や図面の品質になるとされます。これは企画・開発でつくり込む品質で、企画部門や開発部門、営業部門が担当します。
 これに対して、仕様書や図面通りに過不足なくつくるのが「製造品質」です。
これは現場でつくり込む品質であり、製造部門が担当します。
 つまり、企業は高い設計品質と高い製造品質を合わせた「高い総合品質」を狙うわけです。
 
 こういった理論といいますか、ストーリーは単純で明快みたいですが、現実はどちらも関連していて、絡み合っているわけです。
 魅力ある性能や機能やデザインを実現しようと思えば、使用する部品は高価で扱いにくいものになりがちです。また、製造技術が複雑で高いレベルのものが要求されがちです。当然ながら、製造品質のレベルは下がりがちになります。要するに、不良が出やすくなります。
 新機能を採用するとなれば、当然ながら、製造部門、品質管理部門も相談され、いかに安定的に、素早く製造するかということを検討します。当然ながら、コスト削減の検討も行うわけです。
 ここで、開発・設計部門としては、製造の仕方については、もう、製造部門にお任せとなりがちです。仕様書・図面通りに作ってくれるなら、どう作ってくれてもいいよ、ただ、出来るだけ安く作ってね、という思惑です。
 かたや、製造部門としても、扱ったことのある部品ならともかく、初めて扱う部品だと、まず、どう扱ったらいいのかということから検討しなければなりません。そして、製造の仕方についても、設計・開発部門ではそれなりの情報を握っている場合が多く(製造方法がまったくわからなくては設計も出来ませんから)、いちから検討する製造としては不満もでるわけです。製造の仕方がわかっているなら、決めてよ、となるわけです。ただ、設計・開発部門も一応の製造方法を聞いているだけで(新規部品の入手予定先や商社などから)、自身があるわけではありません。
自社の製造工程に最適化どうかはわからないわけです。それは、あくまでも製造部門で責任持って決めてよ、となるわけです。
 以前、私が開発部門にいた際は、設計部門が最後まで、製造部門と連携して決めろ、と言われていました。
 しかし、品質管理担当として係わっている別の事業部では、どちらかというと、製造に関しては製造部門が決めろ、という方針です。
 実際のところ、協力して進めないとしょうがないのかな、という思いがします。
 
 例えていえば、作った橋が落ちてしまったら、設計責任だ、製造責任だ、品質基準が悪かったと言っていてもしょうがないわけですから。

 勿論、設計品質に関しては、設計部門が主導して決めるべきでしょう。
また、製造品質は製造部門が主導して決めるべきでしょう。
さらに、品質管理部門はどちらも、検証して判断すべきでしょう。
 そして、そのさじ加減は企業によって変わるように思います。

 ただ、はっきりしているのは、お客様に渡る時点で、問題を起こさない製品になっているのかということを、各部門の人間が真剣に検討しているか、ということです。

 

後工程はお客様

 これは簡単にいうと「お客様に接するときと同じような丁寧さで、後工程の担当者が業務を進めやすいように自身の業務を引き渡す」ということです。「 次工程はお客様」という考え方が実践されると、業務を引き継ぐ次工程の担当者は、効率よく業務を行うことができるようになります。
 また、作業ミスも防止できるなどさまざまな効果があります。2016/03/12
自分たちの仕事を引き受けてくれる後工程(または、外注先)はお客様です。
「お客様である“後工程”に喜んで頂ける製品やサービスを提供すること」が大事です。
なぜ、同じ会社であっても(外注工場であっても)、後工程はお客様の考え方が必要になるのか?

 社内同志や協力工場との関係では、自分達の都合を優先した考えになりがちです。
自分達の都合を優先してばかりいると、いずれお客様に見向きもされなくなってしまうため、絶対に避けなければなりません。
 一般的な、取引ではそういうものです。お客様の都合を優先しなければなりません。
また、良い品質を最終的なお客様に届けるためには、全ての工程、全ての関係者が、
自分の仕事での責任を果たすことが大切なのです。
 自分の仕事での責任を果たすには、まずは、「次の工程に払い出す製品の品質を保証」
しなければなりません。なぜならば、前工程の品質が悪ければ、後工程で品質の良いものを作り出すことはできないからです。
 従って、後工程も「前工程からは品質の良いものしか受け取らない」という意識を持つ必要があります。
つまり、後工程は前工程に対して正しい品質の要求を行なうこと、そして気が付いたことは前の工程に必ずフィードバックすることが大切です。
 最初の工程から最後の工程まで、全員がこの考え方で仕事を行えば、必ず品質の良い製品を作り出すことが可能です。これがお客様の声を全ての工程が意識し、お客様を考えたものづくりをするために必要不可欠な考え方となります。

 次のような考え方を持っていないでしょうか。

〇最後に検査工程があるから、不良はそこで止めてくれるだろう。
〇不良があったら後工程の作業で気付くので大丈夫だろう。
〇自分の工程だけで精一杯、後工程のことまで考えられない。

 このような考え方をしている人がいる職場では、不適合品がお客様へ流出してしまい、
大問題に発展してしまう可能性があります。
 まず、自工程で保証すべき理由の1つ目を確認します。
モノの製造やサービスの提供では、失敗はつきものではあるものの、不具合が出るたび、それ自体は全て損失となります。
そして、製造工程では、後ろに行けば行くほど、付加価値が付いていきます。
つまり、後工程ほど、不具合発生時の損失や影響は大きなものとなるのです。
従って、「前の工程で起きた不具合も最終検査で止めればよい」という考えではなく、
品質を各工程で作り込むという考え方が非常に重要になります。
不具合は出た工程で必ず止め、後工程には絶対に流さないという考え方が、
損失を最小限とするために必要不可欠です。

 次に、2つ目の理由を製品のキズで考えてみます。
1つ1つの工程において、キズがついたとします。
このキズは、特定の場所に出来る訳ではなく、日々状況によって変わります。
そして、このキズが大きい場合や数が多い場合、ある数や大きさが限度を超えると不良となってしまうわけです。
最終的には顧客にまで不具合品が流出してしまうことがあるのです。

流出を防止するためには、Ⅰ個Ⅰ個のキズを最小限にする製造プロセスづくりが必要不可欠です。
キズの大きさを小さくすること、数を小さくすること、つまり自工程で保証できる体制を築くことが、流出防止の鍵となります。

当然ながら、不良品が顧客に渡ると、会社の信用が失墜します。
失墜した信用を取り戻すまでには、何十年という歳月がかかります。
二度と信用が戻らずに事業を続けられなくなることすらあります。

ものづくりに関わる全社員が、後工程はお客様と考えて、自分の仕事に責任を持って対応することが求められているのです。

続いて、後工程はお客様という考えを満足させる為のポイントを確認していきましょう。

まずは、「後工程の立場で物事を考える」ことです。
後工程に、「どういうものを提供したら仕事が楽になるか」を考えるようにするべきです。
自分達が前工程からどんな物を受け取りたいかを考えると、答えが見えてくるはずです。

次に、「コミュニケーションを良くする」ことです。
発生した不具合内容等を、素早く確実にフィードバックすることが大切です。
言葉だけでなく、現物や写真等を活用し伝達することもポイントです。

最後に、「良否の判断基準を明確にする」ことです。
良否が曖昧にならないように、判定基準を明確に決めるようにしましょう。
担当者によって判断が曖昧にならないような基準をつくることがポイントです。

会社全体で「後工程はお客様」という意識を統一する

 自工程で品質を保証するためには、まずは会社全体で「後工程はお客様」と
いう意識を統一することが必要不可欠です。

後工程はお客様という意識を全社員が持つことが、品質不具合を減らし、
職場のチームワークを生むことに繋がります。そのことが、自工程のためになり、
そして、結果的に会社のためになるのです。

 「後工程に喜んでもらえるモノやサービスを提供する」という考えを持つことで、
工場の中でも顧客を意識したものづくりが連鎖していきます。

 このような最終的なお客様を意識したものづくりが、品質の良い製品やサービスを
生み出す一番の近道になることをしっかりと認識して、ものづくりに携わっていきましょう。

 

品質管理での定量化

  品質管理を定量化すると言えば、当たり前だろうと思われるでしょう。
確かに、定量化された品質管理は多くの場合行われていると思われます。
ただ、皆さん、いろいろ悩みながら、改善しつつ行っているのではないでしょうか。
少なくとも私達はそうでした。
品質データには、定量化しにくいもののありますが、ここでは定量化できる
データについてお話します。
 品質データとして扱うデータ(というより扱いたいデータ)は、
〇蓄積されたデータ
 1.検査結果データ
 2.不良データ
 3.苦情データ

 などでしょうか。
 しかし、このようなデータがあっても、理解しやすい形にまとめるためには
そういったデータを選択したり、集計したりするシステムが必要になります。
データの塊だけあって、あとはExcelAccessなどの処理ソフトだけというので
あれば、処理できなくはないですが、時間がかかりすぎて実際のところ、実現
は難しくなります。
 何らかの処理システムが必要になると思います。そして、そのシステムに
よって、可能な処理もある程度制約されるのだろうと思います。現実的には、
そのシステムで出来ないことは処理不可能です。
 しかしながら、そういったシステムがあれば、いろいろなデータ処理ができます。
現在では、コンピュータ+記憶システムというのが代表的だと思います。
自社システムか、管理・運営を外部に任せたものかはわかりませんが、そのような
処理システムが多いのだろうと思います。
 そういったシステムを使って何をするのか。
 
 1.過去のデータを見ることで、改善すべき点が判る。
 2.改善の目標値を数字で決めることができる。
   (例えば、苦情率〇〇%以下、など)
 3.気づいていなかった問題点を浮かび上がらせること。
    (定量化することで、問題点に気付くことがある)

 そのように、蓄積されたデータを利用して、改善目標を決め、改善を行い、
改善を行った結果の確認を行うわけです。
 この過程で定量化を行うことで、
 
 〇どの程度の改善を目指すのか。
 〇どの程度の改善が実現できたのか。
 
 を、数字で掴むことが重要です。数字で掴むことで、その改善の
 容易さ、困難さがつかめてくるからです。
 
 このように、品質管理活動は「数字」が重要になってきます。
 また、そのために、データ処理システムの存在が重要です。しかしながら、
今まで使ってきたからという理由で、惰性的に使用しているのが普通ではないでしょうか。
時には、システム全体の処理の流れそのものの適否を考えることも必要かも
わかりません。なかなかしんどいことですけどね。
 以前に、苦情データに、お客様のコメントを追加しようとして、システム改造費用が
高すぎて断念したことがあります。こういったことも、世の中の情報システムの進化などで可能にならないか、見ていきたいと思っています。

 

 

 

 

事実に基づく管理

 最近の品質管理は,科学的な管理を目指しているといわれています。
科学的を“事実と論理を重視した考え方や行動”という意味にとらえると、
品質管理で、事実を重視することは基本的なこととなります。

事実に基づく管理は,経験や勘のみに頼るのではなく,事実やデータに基づいて
管理することを意味します。

 しかし,事実に基づく管理を具体的に実行するのは,口で言うほど簡単ではありません。

 事実を調べてデータとして表し,そこから推定したり,判断したりして適切な
アクションをとるためには,まず事実をしっかり掴まなければなりません。
事実が顕在化していないと,とらえた事実が真実の姿のすべてを表しているとは
言えないことにも注意する必要があります。

さらに,その事実をデータ化する必要があります。
ウソのデータや間違ったデータではいけないし,データをとれない場合もあります。

 製品・サービスに不具合が発生したときに,事実を見ずに経験・勘・度胸に頼った想定によって不具合を発生させたメカニズムが説明できることもありますが,実際は想定以外のメカニズムで不具合が発生していたら対処を誤ってしまいます。

例えば,ある問題の原因を追究する場合,ベテランや勘のよい人は過去の経験で
わかっている事実をもとに原因が何でありそうかを考察し,鋭い指摘をすることがあります。それを否定するわけではありません。そのやり方で解決できる場合はそうすればよいと思います。ただ、事実を科学的に解明していった方が、事実の解明の仕方が記録として残りやすいのは確かです。事実に基づく管理を実行していくうえで,“三現主義”が大切であると言われます。

三現とは,現場・現物・現実という3つの“現”を指します。

三現主義は,現場で,現物を見ながら,現実的に検討を進めることを重視する考え方でです。
 問題などが発生したときに,まず問題が起こっている現場に行く,次に現物をよく観察する,そして観察から得た事実を客観的なデータで表して現実を明らかにする,という行動をしっかり確実にとって物事の本質を突き詰めていく三現主義は,事実に基づく管理を実践するうえの基本姿勢です。
 苦情で返品されてきた製品をチェックしても異常が見られない場合がありました。
不具合を再現するために、色々な状況・条件を想定して試験を行いましたが、
苦情状態を再現できませんでした。もしかして、「お客様の勘違いでは?」という
考えもよぎりました。
 しかし、上司の「お客様が仰っていることには、必ず理由があるものだ。勘違いして
 いるとしても、使いづらさなども含めた問題があるはずだ。」という意見で、
お客様に直接、お問い合わせをしてみました。結果、こちらが想定していないある
特殊な条件で(想定していませんでしたが、正常動作すべき状況です)、誤動作が発生
することが判りました。

 また、別の件ですが、新製品の試作品をチェック中に、低温下で、電子部品が焼損
するという事件が発生しました。高温化で部品の自身の温度上昇と合わさって
焼損するということは、発生することはありますが、低温下で焼損が起こるという
ことは初めての経験でした。この件は部品の温度特性と使用条件を詳しく調べることで
低温下で電流が増加することがわかり、そのせいで温度上昇が増えていくことが原因と
わかりました。事実というものには、使用部品の詳細な特性を調べる(あらゆる使用
条件の下で異常が発生しないことを確認する)ことが含まれることを再確認しました。

  現場、現実、現物をいつでも確認できるわけではありません。しかし、出来るだけそうしたチェックを求めるべきです。

 三現主義を愚直に実践し,「そうである」ことを,合理的に見定めることが重要でだと思います。

 

見える化

私は外注工場へ行った際に、現場で「何か問題はありませんか?」と 聞いてみることがありますが、「特に問題はありません」と答える工場が多いものです。今、緊急に問題を抱えている場合を除いて、このような返事が多いようです。では、何も問題がないのかというと、そういうわけではないようです。
この様な工場に共通するのは、仕事の遅れ/進み・品質の実績等、掲示物が少ないことです。
外部から来た私だけでなく、そこで働いている人にも現状が何も見えていないのではないか、と心配に思ったりします。
何も見えなければ問題が無いのは当然で、 改善活動の必要性も生じないわけです。
それに引き換え、品質が比較的良い工場では、現場に先月の組立ミス数などが書いてあったりします。そして、その横に「今月の組立ミス目標は○○件以下!」と書いてあります。もっと短いスパンで目標を見せれば、それだけで改善は進みます。1か月スパンで書いてしまうと途中で見直せないので、なかなか改善されないと思います。
  要するに「みえる化」(先月までの現状を見える化することと、改善目標を見える化する)することが改善の原点であり、「みえる化」無くして改善は無いわけです。
 私も、若い頃は、「見える化」なんてと、バカにしているところがありました。自分の席に戻って先月のミスの件数や今月の目標などを調べればわかるじゃないか!。でも、そういうことを、わざわざしないと解らないのではいけないんですね。製造の現場で常に知りたい情報が目に入らないと、判断ができないし、次の行動が取れないんですね。このように、「見える化」というのは、改善の基本です。
第一ステップかもわかりません。このように大事な「見える化」ですが、何でもかんでも掲示すればいいかというと、そういうわけにもいきません。あまりに掲示物が多いと、目移りしてしまって、重要な情報がわからなくなってしまいます。重要度を考えて、取捨選択も必要です。工場以外でも、品質で大きく注目するのは、次の3つの時点です。
設計開始時、量産開始時、変更点発生時。
この、3つの時点で品質に関して「見える化」して、確認・改善を行うことです。
それは、設計開始時のデザインレビュー。
生産開始時の初期品の流動管理。
(各工程で初期品は詳しく見ていくこと)
変更点発生時の工程変更管理。

 これらの時点での状況と目標を「見える化」することで、よりよい方向へ
進めることができるわけです。
 また、各企業、各工程での見える化のやり方には、経験や創意工夫が積み重ねられて、改善されていくのであろうと思います。そうすることで、日々、やり方は改善されていくに違いありません。

 

品質苦情が発生する場合

 苦情というのは、生産、提供側からは思いもしないことから発生します。
しかし、それは、後から考えてみれば、検討不足から発生することが多いものです。
そして、それは数字で確認すべきものだと思います。
 以前に、関連する業界ではありますが、今までおつきあいしたことのなかったメーカーと新規の製品を共同開発で出しましょうということになり、企画しました。といっても、ほとんど、相手の業界の製品のアレンジであり、こちらからすると、ほとんどOEM製品であるようなものでした。生産も相手方にお願いしました。ただ、使用環境はこちらの業界のものであり、製品の使用環境の品質基準は「このような基準を守ってもらいたい」ということで提出しました。製品化の終わり、納入検査も無事終了して、出荷となりました。
 ところが、出荷後、1か月くらいして、不具合苦情が何件か報告されたわけです。
正直、こちらでは、よくわからず、相手に苦情品の解析をお願いしました。
 結果、低温で不具合が発生することが判りました。ここで厄介なのが、低温になっても全部不具合になるわけではないわけです。しかしながら、全体の3割位は不具合になるような結果でした。納入検査で一応確認はしたのですが、異常は見られませんでした。バラツキのあることですが、たまたま、検査した数セットがOKだったようです。
 では、相手方の出荷検査はどうであったのかということですが、低温テストはしていなかったということが判りました。
  ここで初めてわかったことですが、似たような業界ではありますが、相手方の環境条件では低温の条件が違っていて、もっとゆるかったようです(低温温度がもっと上だった)。しかし、相手の方も同じような環境だと思って、低温検査は自社条件で行っていたわけです。
 最初の条件確認の際に、相手方がこちらの条件をすんなり飲んだせいで、同じような環境条件なのであろうと思ってしまったのが問題だったわけです。
  このような、自社の常識で相手方の常識を判断してしまうということは問題の元なのですが、気を付けないと間違ってしまうことがあります。
 他にも、製品に使用するためのセンサとしてどうですか、という売り込みにこられることがあります。
 その際も、使用環境や条件をよくお聞きしないと、使えるかどうかわかりません。
  以前に、車の中で使用しているセンサを売り込みに来られて、お話をしたことがあるのですが、耐衝撃性でムリだということで、お断りしたことがあります。「車のなかの過酷な環境で使われています。」と仰っていたのですが、衝撃性としては不足でした。この場合も、相手の考えている常識とこちらの想定している常識が合いませんでした。
 これは、製品に限りません。測定器や製造工程での制御機器でも同様です。お互いの考えている常識は違っていると、ほんとうに苦労します。当たり前ですが、詳細に数字で確認すべき事です。
   
 

品質向上のための集団活動

集団活動をきちんと行うことは大事ですが、その例として5S活動を上げてみたいと4思います。

 5S活動とは、
 
整理(Seiri) ー要るものと要らないものに区別して、要らないものを処分する
 整頓(Seiton) ー要るものを使い場所にきちんと置く
 清掃(Seisou) ー身の回りのものや職場をきれいに掃除をして、いつでも使えるように

       する
 清潔(Seiketsu)ー 整理・整頓・清掃を維持し、誰が見てもきれいで
         わかりやすい状態に保ち、きれいな状態を保とうという気持ちに

        させる
しつけ(Shitsuke)ー 職場のルールや規律を守り、習慣づける
 
 の五つを行うことです。
 
5S改善の目的は、作業のしやすい職場環境をつくり、作業のバラツキを無くして品質と生産性を高めることです。
5S改善を実施する効果は、これだけではありません。
他の目的も掲げて取り組む場合もあります。
改善のイロハを習得するための5S改善もあります。
5S改善は、他の様々な改善においても役立つ、改善の進め方のイロハを学ぶことが
できます。
価値観の転換を図り、創造性開発のためにも5S改善は役立つといわれています。
整理改善では、整理基準を明確にして、今の仕事の価値を見直し、仕事の新たな価値を
探求するからです。
標準化を進め組織力・チーム力を高めることにも5S改善は効果を発揮します。
必要なモノを判断する基準や、使いやすい整頓の基準を定め、共有することで、
作業がうまくかみ合い、スムーズな仕事ができるようになるからです。

 このように5S活動を行うことで、いろいろなメリットがあると思われますが、
私は、その中でも、グループ全員で行うことに意義があると思っています。
逆に言えば、全員で行わなければ、効果は少ないと思っています。
例えば、「整理」ひとつ取っても、全員で話し合って、全員が納得しなければ
活動を進めることは難しいでしょう。その話し合いの中で、各人の考え方の違いも
解ってくるでしょうし、また、グループとして成果を出すためには、考えを合わせる必要性もわかってくるかと思います。

5S活動を例に上げましたが、企業の中での集団活動は、やはり、成果を出すことだと思います。
集団として、どうやって成果を出していくのかということを、実際に学べるのは、こういった小集団活動だと思います。
人の考え方を理解して、また自分の考え方も理解してもらう。その上で、どうやって、目的に向けて進めていけばいいのか、というノウハウを身につけていく。こうしたことが出来なければ、企業としての成果は上げにくい。また、上げていかなければいけないのだと思います。
ただ、前にもいいましたが、集団活動はいかにしてモチベーションを上げるかというのが大切です。
その前提として、やはり、「評価」というのが大事であろうと思います。ここは、管理職の方が苦労するところではあるでしょうが、なんとか、部下の「やる気」を引き出していただきたいと思います。

 

品質向上のための人の管理

今回は、"4M"のなかで人(Man)の管理について、話をしてみたいと思います。
品質に限らず、人の管理というのはなかなか難しいところだと思います。
また、部門によっても悩みどころや育成の方法等、いろいろあると思います。
企画、設計・開発、製造、営業、品質管理などバリエーションがあると思います。
 各部門でそのなかでも、直接部門として、製造部門を考えてみます。

 品質に関係する要素(といっても生産性に関することになると思いますが)として考えた場合の人(多くの場合作業者、Man)とは、各個人が変わっても、製品、部品の出来が変わらないこと、バラツキがないことというのが、最低限の要求であろうと思います。個人差が大きく、出来栄えに差があると(極端に言えば、不良品もあれば良品もあるという状態では)困るわけです。
 また、それだけでなく、高いスキルを持っていれば、より有り難いわけです。品質の向上も望めますし、生産効率の向上も望めるわけです。
 スキルの向上ということで言えば、個人のスキルの向上と集団としてのスキルの向上の二種類があると思います。個人のスキルの向上については、上司は各個人のスキルの
実際を把握することは重要ですし、その向上のために教育や訓練の計画を立てて、
具体的にスキルアップしていくことが重要です。
 集団としてのスキルも重要で(私はこちらがより重要だと思っているのですが)、
こちらも実態の把握と教育・訓練の計画を立てることが必要です。小集団活用などで
実際に体験するほうがいいと思います。私の経験によればですが、実際に体験してみないとなかなか解りずらいものです。
 「5S活動」などで、集団としての成果を上げるという経験を積むことは大事だと思います。
また、個人としての成果を上げることには熱心だけど、集団としての成果を上げることには熱心ではない人がいますが、企業として、どちらがより貢献できるかと言えば、集団として成果を上げることが重要であると思います。
(これは小集団活動が重要であると言っているのではありません。いろいろな業務を行っていくうえで、集団としてどう成果をあげていくかということは重要であるということです。)
 ただ、人の考え方を集団的な活動の重要性というものを認識させるためには、「ちゃんと評価する。」ということも重要であると思います。評価もせずに、「重要だ重要だ。」と言っても、部下は納得しないと思いますので。
 教育・訓練について言えば、いかにしてモチベーションを上げるかということはとても大事だと思います。
 こうして、人としての資源をレベルアップしていって、それをいかにして、生産性向上のために使っていくか(品質管理部門としては品質改善するために使って貰うか)、より有効的に活用するかということだと思います。
 資源という言い方で、物理的表現しましたが、有効活用に関しては、クールに割り切ることが必要な場合もあるからです。

品質向上のための「方法」の管理

 今回は、"4M"のなかで方法(Method)について、話をしてみたいと思います。
品質に関していうなら、方法というのは、いろいろ考えられます。
製品の企画の方法、設計・開発の方法、製造の方法、営業の方法など。
 そのなかでも、品質によく関係するのは
○ 設計・開発の方法
○ 製造の方法

 だと思います。他もいろいろ関係してくるのですが、多くの場合、この二つが関係してくるので、この二つについて説明します。
 
 まず、設計・開発の方法についてですが、今までのやり方で問題が生じたので、やり方を考えないといけないわけですが、そもそもの原因として、
 ①設計者の能力不足で設計が不十分だった。
 ②設計者のうっかりミスで間違った設計をしてしまった。
  というのがあります。
 ①の設計者の能力不足が原因である場合、その設計者に任せた上司の判断にも問題が
あるわけで、今後の人選や、そのサポートも真剣に考えてもらわないといけません。
 ②のうっかりミスの場合は、設計者のやり方(確認方法も含めて)を見直してもらわないといけません。勿論、上司の承認の仕方も見直しが必要です。設計工程で間違いのないOUTPUT(図面など)を出してもらう方法を見直してもらわないといけません。
 また、品質管理部門もチェック方法が妥当であったかの見直しが必要です。
 
 次に、製造の方法を見直す場合、基本として、QCD(品質、コスト、納期)の面からの見直しになります。勿論、品質に問題があって、見直すわけですから、品質中心の再検討になりますが、次の方法案について、コストや納期に関しても検討が必要になります。製造に関しての方法の見直しということになりますと、通常はQC工程表が必要になります。
ものの本でも、「QC工程表を元に、製造方法を検討して、最善の方法に変更する。」と記されていると思います。しかしながら、QC工程表が揃っていないことも、結構あります。
 実際は大抵揃っています。しかし、最新の状態になっていないことが多いわけです。要するに、変更や改訂がちゃんとされていないことが、結構あるわけです。なので、QC工程表の内容が合っているかのチェックが、まず必須となります。そこから、より良い方法の検討に入ることになります。
 製造工程の工程設計といっても、従来からの方法を踏襲している場合が多く、なるべく変更しないように、工程をつくられているように思います。
 たしかに、突然、大きく変更すると、予期せぬ不具合が出てくる確率も高く、アレンジ、アレンジと続いていく場合が多いと思います。しかし、問題が発生した場合は、従来のやり方から離れて検討してみることも必要だと思います。検討後、色々な想定を行って、妥当性を検討すればよいわけですから。最初から、「QCD」の「CD」を優先してはいけないと思います。「Q」の見直しなのですから。
 当たり前ですが、「方法」の検討といっても、「人」や「設備」と関連しているわけで、切り離して考えることは不可能です。作業者に合わせた方法、機械・設備に合わせた最適な方法を考えないといけません。