品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

事実に基づく管理

 最近の品質管理は,科学的な管理を目指しているといわれています。
科学的を“事実と論理を重視した考え方や行動”という意味にとらえると、
品質管理で、事実を重視することは基本的なこととなります。

事実に基づく管理は,経験や勘のみに頼るのではなく,事実やデータに基づいて
管理することを意味します。

 しかし,事実に基づく管理を具体的に実行するのは,口で言うほど簡単ではありません。

 事実を調べてデータとして表し,そこから推定したり,判断したりして適切な
アクションをとるためには,まず事実をしっかり掴まなければなりません。
事実が顕在化していないと,とらえた事実が真実の姿のすべてを表しているとは
言えないことにも注意する必要があります。

さらに,その事実をデータ化する必要があります。
ウソのデータや間違ったデータではいけないし,データをとれない場合もあります。

 製品・サービスに不具合が発生したときに,事実を見ずに経験・勘・度胸に頼った想定によって不具合を発生させたメカニズムが説明できることもありますが,実際は想定以外のメカニズムで不具合が発生していたら対処を誤ってしまいます。

例えば,ある問題の原因を追究する場合,ベテランや勘のよい人は過去の経験で
わかっている事実をもとに原因が何でありそうかを考察し,鋭い指摘をすることがあります。それを否定するわけではありません。そのやり方で解決できる場合はそうすればよいと思います。ただ、事実を科学的に解明していった方が、事実の解明の仕方が記録として残りやすいのは確かです。事実に基づく管理を実行していくうえで,“三現主義”が大切であると言われます。

三現とは,現場・現物・現実という3つの“現”を指します。

三現主義は,現場で,現物を見ながら,現実的に検討を進めることを重視する考え方でです。
 問題などが発生したときに,まず問題が起こっている現場に行く,次に現物をよく観察する,そして観察から得た事実を客観的なデータで表して現実を明らかにする,という行動をしっかり確実にとって物事の本質を突き詰めていく三現主義は,事実に基づく管理を実践するうえの基本姿勢です。
 苦情で返品されてきた製品をチェックしても異常が見られない場合がありました。
不具合を再現するために、色々な状況・条件を想定して試験を行いましたが、
苦情状態を再現できませんでした。もしかして、「お客様の勘違いでは?」という
考えもよぎりました。
 しかし、上司の「お客様が仰っていることには、必ず理由があるものだ。勘違いして
 いるとしても、使いづらさなども含めた問題があるはずだ。」という意見で、
お客様に直接、お問い合わせをしてみました。結果、こちらが想定していないある
特殊な条件で(想定していませんでしたが、正常動作すべき状況です)、誤動作が発生
することが判りました。

 また、別の件ですが、新製品の試作品をチェック中に、低温下で、電子部品が焼損
するという事件が発生しました。高温化で部品の自身の温度上昇と合わさって
焼損するということは、発生することはありますが、低温下で焼損が起こるという
ことは初めての経験でした。この件は部品の温度特性と使用条件を詳しく調べることで
低温下で電流が増加することがわかり、そのせいで温度上昇が増えていくことが原因と
わかりました。事実というものには、使用部品の詳細な特性を調べる(あらゆる使用
条件の下で異常が発生しないことを確認する)ことが含まれることを再確認しました。

  現場、現実、現物をいつでも確認できるわけではありません。しかし、出来るだけそうしたチェックを求めるべきです。

 三現主義を愚直に実践し,「そうである」ことを,合理的に見定めることが重要でだと思います。