品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

測定機器のチェックの必要性

 

 品質管理だけではないのですが、色々な局面で測定機器を使用することになるものです。
工程での検査や、部品の受け入れ検査、製品の出荷検査。
また、設計・開発での試作品のチェックなど。
 このような検査やチェックに際して寸法チェックや質量チェックといった各種測定に使用する測定機器は、使用前に、正常に機能することを確認しなければなりません。
車も動かす前に、正常に動くかどうかチェックする必要がありますよね。但し、私も、あまりチェックしないので人のことは言いにくいのですが。
 測定機器も測定精度を保証するために、使用前に日常点検として、正常に動くかどうかをチェックすることを義務付けられています。
 また、定期的に校正を行わなければなりません。車でいえば、車検のようなものでしょうか。
このような校正は、国際的な原器といわれるものと関連付けられていなければなりません。
 これをトレーサビリティと言って、信頼できる”親原器”(といっていいのかどうかわかりませんが)で計測比較して、結果的にズレが許容できる範囲内ですよ、と保証できなければいけないわけです。
こういった校正のやり方には、大きくわけて二通りあって、

1.社外校正
2.社内校正

という方法があります。

 1.の社外校正という方法が、ある意味簡単で、専門業者にお願いして、校正していただくというものです。
 私共は通常、購入先にお願いしたり、専門の測定機関にお願いしたりします。
購入先も通常は測定機器商社や測定機器メーカーが多いので、「校正をお願いします」
と言えば、大抵、引き受けてもらえます。結果は、いわゆる校正の”三種の神器”(最近はあまり言われませんが)と言われる『校正証明書』、『検査成績書』、『トレーサビリティ体系図』を添付して、校正の終わった測定機器と一緒に返してくれます。
 この社外校正が簡単で楽です。外部に出せば、自動的に校正されて、終わってくるわけですから。
ただ、デメリットは費用がかかることと時間がかかることです。簡単なものでも、ノギスなどでも、1個につき2,000円くらいから5,000円くらいかかります。台数が少ない場合はそうでもないのですが、
台数が多いとばかになりません。また期間も1週間から2週間くらいかかることがあります。
その間、使用できないのは、業務に支障をきたすことがあります。
 そこで、私共の会社では、簡単な測定機器(?、一般的なノギス、マイクロメータ、ダイアルゲージ、温度計など)は、社内に社内原器というものを置いて、その社内原器で、2.の社内校正をして、時間短縮、コスト削減を図っていました。
 勿論、社内原器と呼ばれるものは、精度的にも校正される測定機器より高いものが要求され、購入価格も精度に関連して高いものになります。しかしながら、時間的なものや経費的なものを考え、出来るだけ社内校正ですませるようにしていました。当然ながら、校正業務の出来る社員は一定の校正業務訓練を受けて、能力があると認定された人達です。
 また、こういった校正された測定機器は、まえにもいいましたが、日常点検を義務付けられていて、異常が見られた場合は対応処置をしなければなりません。こういった努力で、測定機器のデータの信頼性を維持・確保しているわけです。
 しかし、測定機器の精度の信頼性を確保するための、陰の努力(別に陰ではないのですが)を知らない人が結構いるのは事実です。
 試作品をチェックするために、ノギスやマイクロメータを使用している設計・開発の人がいるのですが、校正をしているようには見受けません。校正されていない、測定機器でチェックしたデータは信頼できず、判断材料にしてはいけないはずですが、構わず使用している人もいるようです。もうちょっと良心的な人(?)は品管部門の校正
された測定機器を借りに来るのはいいのですが、日常点検(使用前点検)をしてくれる人は少ないのが実情です。
確率が少ないとはいえ、異常かもしれない測定機器で測ったデータをそのまま採用するのは危険です。必ず、使用前に正常であるというチェックをすべきなのです。
 これが、大きな測定機であると、品質管理部門以外の人に、使用前点検の必要性を理解して貰うのは、一層難しくなります。
 こういった、データの信頼性というものを全社的に理解していただけるのは、なかなか時間がかかるのかな、と思っています。