品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

測定機の導入

 測定器に続いて測定機の導入についても述べてみたいと思います。
測定器と測定機の差についてですが、

JISでは、測定器は測定を行うための器具装置などを指すとあります。
一般的には、ノギスやダイアルゲージなどを指すと思われます。

 測定機は複数の機能要素を組み合わせた機械のことを言い、複数の測定器が付いて、何らかの測定をするような装置を指します。

 一般的に(JISの定義ではなく)、”機”と”器”の違いは、モーターなどを使って動きのあるものを”機”と表現し、能動的に動かさないものを”器”と呼んでいるようです。
 
 これからは、”測定器”、あるいは”測定機”と呼ぶようにします。
  ただ、”測定機”を”試験機”と呼んだりすることもあるかもしれません。
  ”器”と”機”で判別してください。  


 ここで、測定器と同様に、測定機の導入の前に、仕様を決めます。
 仕様を決めるために仕様書を作成します。
 ただ、ここでもう一つ決めるべきことがあります。それは、汎用的な測定機にするか、カスタムメードにするかということです。

 汎用の測定機を選んだほうが割と簡単です。必要な仕様の汎用測定機が世の中にあれば、そこから選択すればよいのです。
例えば、強度試験のための引っ張り測定機であるとか、三次元の寸法を測定する「三次元測定機」などが有名です。

 一方で、カスタムメードの測定機は自社で製作するにしろ、産業機械を製作している会社にお願いするにしろ、仕様と図面を提出してお願いするのが正常な依頼です。しかしながら、そこまで、時間を掛けているわけにいかず、設計もお任せするのが多いというのが実情です。
  例えば、同じような測定機が既にあって、増設する場合は、「これと同様でもう一台」という依頼をすることもあります。変更部分があれば、それだけを仕様書に記入して依頼する、ということもありでした。


 しかしながら、校正などは、こちらで行わなければならず、校正手順書も作成する必要があります。
それに、安全衛生についても検討する必要があります。
 また、通常は、製作完了・入荷時に、受け入れ検査を行います。その際、簡単な動作チェックや仕様の確認で終わることが、ほとんどですが、複雑な測定機の場合は、検査基準書を取り交わしておく必要があるかもわかりません。
  後々、トラブらないためには、そういったことも必要かもわかりません。

 そして、測定器と同様に「△△測定機マニュアル」というような、取扱いマニュアルを用意したほうが良いと思います。

 なお、汎用の測定機であれば、このような取扱いマニュアルは添付されて納入されると思います。
 このように、カスタムメードの測定機は手間のかかるもので、大変なのですが、逆に言えば自社のコア・コンピタンスにつながる技術であり、固有技術であるわけです。
そこにこそ自社の強み、他社、ライバル社に対するアドバンテージがあるように思います。こういった面は、上司や経営陣には理解して頂きたい事柄です。

こういった経験、ノウハウ、技術(固有技術です)は、必要であれば、育てていく必要があります。
 そうすることで、製品の重要な品質が確認でき、また確認出来る(数字で捉えられる)ことで、品質改善が容易になっていきます。
 新幹線と比較するのもおこがましいのですが、最高スピードが上昇しました、では品質(性能)確認がもうひとつなわけです。
 最高スピードを測定して、285km/hから330km/hへの改善度が数字で捉えられました。目標は360km/hらしいのですが、今回の改善部分と、あと30km/hの上昇分との関連性を検討されていることと思います。どこをどれくらい改善すればアップできるかということも掴んでいることと思います。
 新幹線ほどだいそれたことではないのですが、製品の品質(性能)改善も数字で掴んで、上昇させていくものです。数字で掴むためには、独自の測定機が必要なことがままあります。

 もう2,30年前ですが、アメリカにミニコンピュータメーカーのDEC(デジタル・イクイップメント・コーポレーション)という会社がありました。そこの経営者の伝記物を読んだことがあるのですが、そこで開発する新型のミニコンピュータの評価をするために、まず評価マシン(測定機です)を開発するそうです。なんと、新型コンピュータの開発期間の半分以上の期間を、評価マシンの開発。製作に費やすとのことでした。

その当時、その書籍を読んでびっくりしたことを憶えています。いつでもかどうかは解りませんでしたが、新製品の評価をするには、新型の測定機が必要なのだということを知りました。これは、私が品質管理部門に替わる前のことです。

 性能改善、品質改善とは、製品・部品の性能アップと成果の相関を数字で比較して、どれ位寸法を変えるとか、強度を変えるとかを検討して、結果との比較で進めていくものだからです。そういったステップは避けて通れないのでしょう。