新幹線台車不正での対応が見えにくい
新幹線台車の亀裂問題で2018/09/28の川崎重工業が行った記者会見の動画を見ました。
気になったことを書いてみます。
私は、日常生活や趣味の活動で使用する製品を製造するメーカーにいたのですが、
品質管理部門に異動して間もないころ、上司から言われたことがあります。
それは、不良品や客先からの苦情品が発生した場合、製品に関しては、昨日・今日・
明日のことをすべて考えろ、ということです。
昨日とは、今までに販売してきたもののことです。
今日とは、今まさに生産している製品です。
明日とは、これから生産するものです。
今まで販売してきたものは問題ないのか、問題がある可能性があるなら、どうするの
か。回収して修理させていただくのか、修理が難しいなら、交換させていただくのか。
今生産しているものは、すぐ対策できるものか、できなければ、一旦生産を中止して
すぐ対策会議を開き、応急処置を考える。
これから生産するものは、恒久対策を考える。 川重の動画を見ていてよくわからなかったのは、今生産しているものと、今後生産するものに関してです。
私たちの製品の感覚で考えると、対策はもちろんですが、とりあえず一定期間は
通常検査よりも綿密に(今回必要とわかった検査項目を追加して)全数検査を行います。一定期間経過後(業界や製品によると思いますが、半年から1年、生産数が少なければ、もっと時間をかけるかもわかりません)、通常検査に戻します。もちろん客先の了解を得てです。
この検査部分の話が抜けていて、検査をするのか、するとしても、どの程度の
検査を行うのかという話が何もありませんでした。
当然、そういう類のことは行われているのでしょうが、我々一般人にそこまで説明していたらきりがない、ということでそういう説明は省かれたのでしょう。
でも、QC経験者から言わせていただくなら、そういう当たり前の話こそ、聞きたい
ことでした。なぜなら、”当たり前”のことを行っていなかったから、こういう事態が起こったと思うからです。
恒久的に、品質保証体制の強化、コミュニケーション強化など、また原因解明のQC手法の話、外部有識者との連携等、確かに大事でやっていただきたいという話がいろいろでたのですが、基本的な話が聞けませんでした。まあ、全体的に見直してちゃんとやります、ということのアピールが大事で、詳細までは発表している時間がなかったのでしょうが、私が知りたいことは、あまり知ることはできませんでした。
検査していなかった項目を検査するとか、外注変更時の業務依頼に問題があった
のなら、業務依頼仕様をどう変えるのか、変えにくいなら、設計変更で対応できない
のか、とか。
変更点管理はもちろん改善していかないといけないのですが、不良品の発生防止と
流出防止の具体策が見えませんでした。
要するに、本当にもう不具合品は流出しない、という状況が見えませんでした。
出来れば、もっと俗な話でもいいので、台車を製作している人達は、新幹線に乗っていて何の不安も感じていなかったのかどうかとか、そういうことは報道関係の人が突っ込んで質問、取材をしていただきたかった、というのが本音です。マスコミの方々も、本人や家族の人が新幹線に乗っていて、こういう事態が進行していたのだということが判って、何も感じなかったのでしょうか。一般ユーザーの視点に立った、疑問や質問がほとんど見られなかった説明会の動画でした。
製造企業でも、また、報道関係でも、一般の人の疑問、素朴な質問というものは大事です。私も、一般ユーザーからの質問にはできるだけ一般ユーザーの立場になって回答させていただきました(実際に回答するのはサービス部門ですが)。
品質管理経験者の私が見て、納得できないものを、一般の人が見て納得できるので
しょうか。メーカー側にも、報道関係にも不満が残った説明会見でした。