品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

品質向上でコスト低減になるのか

 品質改善を行う際に、品質を向上させることで、コスト低減に結びつくのか?と疑問に思うことがあるのは確かです。これを言ってしまうと、品質管理部門の人間としては、身も蓋もない、ということになってしまうのですが、企業人としては、いつも悩みながら仕事をしているのが実情です。
 勿論、品質管理部門の建前としては、「お客様の身になって、満足していただける製品やサービスを供給する。」というのが目的です。

 そのためには、問題が発生した場合は、とりあえず、コストアップや思わぬ経費が発生しても、品質上問題のない製品やサービスを市場に供給しなければなりません。そうして、次回からは、問題を起こさないように、(同じ轍を踏まないように)未然防止の対策をたてて、不具合を発生させないように、また余計な経費やコストを掛けないように、企業としての利益を確保するように計画を立て、実行していくわけです。
 しかしながら、市場でのトラブルが続くと、弱気になることがあるのも事実です。
通常、よほどのことがない限り、問題を起こす製品は、そう多くなく、その他の製品はそれなりに利益を確保しているものです。しかし、中には、問題を続ける製品もあるわけで、そういった製品を担当している社員は大変です。問題の遠因はいろいろあります。
 そもそも、設計能力が不足で、お客様の要望に応えられていない。
 製造技術が不足で、やはり、お客様の要望に応えられていない。
 営業力が不足で、市場の要望を吸い上げきれていず、魅力的な製品となっていない。

 結果、売り上げが振るわない、苦情品が多いなどということが、続けば、最悪、市場からの撤退ということもあり得るわけです。
 
 こういったことは、経営判断も必要なことで、どこまで品質管理部門がかかわれるかというのは難しいところです。
 
  過去、私が担当していた製品も似たような状況になったことがあり、次回に出す製品に改善が見られなければ撤退もやむなし(この製品のシリーズだけですが)という話が、経営陣から出たことがありました。

 苦情が多い。
 魅力がもう一つ(売れ行きがもう一つ)。
 今のところ、先行き改善の見通しが立たない。
 
 というもので、企画・開発の意見としては、
 まず、魅力創出(新機能創出)、苦情見直し(慢性苦情の撤廃)というものでした。
 そのためには、当面の利益を削ってでも、売り上げを伸ばし、その後、3年計画で利益確保を図るというものでした。まず、市場で魅力があると認めて貰わないとダメなので。
  品質管理部門としても、苦情削減は大歓迎で、過去のトラブルのまとめと削減案のとりまとめ、また、新機能の品質的な未然防止(出来る範囲ですが)を検討しました。
 結果、新製品投入後に、新機能ゆえの苦情は出たのですが、設計との連携ですばやい設計変更による不具合対応ができたと思っています。また、従来からの慢性的な苦情はほとんどなくなりました。
 さらに、利益を削ったことによる、コスト削減の効果もあり、新機能の好評と合わせ、売れ行きは大きく伸びました。
 こういった、売れ行きの伸びによる、量産効果もあり、その後ですが、コスト削減も進み、利益改善もできました。
 結果的にですが、品質向上によるコスト低減は出来たのかな、と思います。
 ただ、製品がなくなるかもしれないという、危機がいい意味で、部門を超えて、連携できたことは大きかったと思っています。結果的に、品質を向上させてコスト削減を達成できたのですが、そうなるまでには、全社的な協力体制と色々な部分での創意工夫が必要であったと思っています。ものの本に書いてあることは、いざ実践となると大変です。しかしながら、みんなで本気になれば、可能でもあるのだな、とも思います。