品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

設計品質の確認

 品質には大きくわけて、設計品質と製造品質の二つがあります。
種類や範囲が広いのは、製造品質の方です。
品質不具合の理由も多岐に渡り、苦労するものです。しかしながら、製造品質に関しては、量産に移行した後でも、改善の方法がなくはないのです。製造方法を変更することで品質を改善したり、作業者のスキルを向上させることで品質を改善できることもあります。
 しかしながら、設計品質に関しては量産に移行してしまうと、後での変更は本当に大変です。
使用材料などは先行して購入しているのが通常なので、仕様変更となると廃棄しかありません。全て損失となります。
図面変更となった場合も、仕掛品を手直し出来ればいいのですが、無理ならやはり廃棄ということもあるわけです。
このように、設計品質が悪くて問題があると、モノづくりの上流での不具合なだけに、影響はとても大きいものになります。
 そのためにISO9001などのような品質マネジメントシステムでも設計・開発工程での要求事項はいくつかあります。
1.設計・開発の計画
2.設計・開発へのインプット
3.設計・開発の管理
4.設計・開発のアウトプットおよび変更
5.設計・開発のレビュー、検証、妥当性の確認

などです。
 このなかで、品質確認のポイントとしては

①インプットでのチェック
②アウトプットでのチェック
③レビュー、検証、妥当性の確認

でしょうか。
 ①のインプット時点で品質管理部門として要求できることやチェックできることは
 
 ○ 品質目標の提出
 ○ 関連法令・法規の提出
 ○ 過去トラリスト(不良、苦情など)
 ○ 評価基準表
 
 などです。
 
 ②のアウトプット時点でのチェックとしては
 
 ○ 図面での問題点指摘(材料、寸法、加工方法など)
 ○ 試作品の検査結果
 
 です。
 
 ③レビュー、検証、妥当性の確認としては
 
 ○ 図面での問題点
 ○ 試作品での検査結果
 ○ 製品の操作結果
 
 です。
 
  しかし、設計・開発というのは、担当者の個人的なスキルが大きく影響するものでもあります。
 本人が蓄積した固有技術や汎用技術や検証技術によって進められていきます。
先輩・上司のサポートもありますが、やはり、個人の能力の差は出てきます。
そういった個人のスキルの差をどう埋めていくかというのも大きな問題です。
そんな中で、若い人ほど、品質上の配慮より、新規の機能をいかにして発揮させるかということに集中し過ぎる傾向にあります。品質管理部門としては、このあたりは、逆に品質管理部門として、集中したいところです。
 以前にあったことですが、妥当性の確認を行うのに、量産試作品を何十個か作成して、確認を行いました。
その際は何の問題もなく、終わったのですが、初品検査あたりから、問題が出始め、量産後、2-3か月したころから工程不良が恒常的に出るようになりました。
 工場に出かけて行き、不良の状況を詳しく訊いたところ、量産試作品の頃から出ている問題だということでした。
量産試作品には何の問題もなかったが、と言ったところ、量産試作品を製造している頃、設計・開発担当者が見に来て、不良の件を相談したところ、とりあえず、除けておいてくれとのこと。不良対策は考えるからと。そのまま、時間が過ぎてしまったので、
不良分をどうするのかと、聞いたところ、不良が出ていることが製造部門の関係者に知られたのだということでした。
 これなどは、設計・開発担当者が妥当性の確認の意味を解っていないために、不具合項目を公表せずに量産まで行ってしまった最悪の例ですが、その後も、量産試作時に不具合を隠すようなことが、時々ありました。結局、量産開始時に不具合が発生すると、対策をせねばならず、量産開始が遅れるわけです。ですが量産開始が設計不具合で遅れると設計・開発担当者の責任となるので、評価が落ちるわけです。
 しかし、評価が落ちるから、不具合現象をなるべく隠すというのは、本末転倒です。ずっと隠し通せるわけはないのです。
この件は会議で問題にして、上司から設計・開発部門の管理職に文句を言って貰いました。設計・開発部門での品質向上意識を上げてくださいと要望した次第です。
また、品質管理部門も量産試作製造時には、製造ラインへ見に行くようにしました。