品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

外注移管時の品質保証

 外部から調達する原材料や部品の品質不良は、後工程の自社の加工ラインや組み立てライン、そして、また、他者の組み立てラインなどにも大きな生産問題を引き起こします。
 結果的に、顧客への品質保証にも問題を起こすことになります。
車のエアーバッグ問題でもわかるように、外注部品メーカーの問題が、世界中の車メーカーにリコール問題を引き起こすことがあるわけです。
このケースは、元々、全数検査出来るものではない、稀なケースかもわかりません。(検査そのものが、破壊検査になってしまいますので。)
 しかしながら、顧客としてみれば、完成車メーカーへの信頼で購入しているので、「部品メーカーが引き起こした問題なので解りません。」といわれても、困ってしまいますし、そういうべきではないと思います。
 実は、このエアーバッグのリコール問題が発生した際に、思い出したことがあります。
それは、もう20年程前でしょうか、私の家でスーパーから購入した惣菜ものを夕飯で食べていた時でした。
家内が食べていたガンモドキ(だったと思います、はっきりとは覚えていません)に変なものが入っていると言い出したのです。
言われてみて、見てみると、人のまつ毛の一部のようなものが紛れ込んでいました。家内によると付けまつ毛の一部ではないか、ということでした。
 工場で女性従業員が落としたのでは、とのことでした。
それは、気持ちが悪いので、やめて、別のオカズで食事をしました。しかし、気分がわるいので、その某スーパー(全国展開している有名スーパーです)に苦情に行こうと私が言い出して、夜でしたが、まだ営業時間内だったので苦情を言いに行きました。
 スーパーのサービスカウンターで女子従業員に「これこれ、こういうことで、どういうことなのか、事情を聴きたい。」旨、伝えました。
ほどなくして現れたのは、食品コーナーの主任という人で、状況を伝えたところ、
「申し訳有りませんでした。代わりの製品をお渡しします。」とのこと。
「いやいや、正直、同じものはもう食べる気がしない。どうしてこうなったのか知りたい。」と言いました。
しかし、その主任さんは「仕入れている業者は、近所の他のスーパーも利用している加工業者で、どことも同じようなものです。」とか、「加工業者には注意するように言っておきます。」などというような説明を繰り返すばかりなわけです。
 ようするに、スーパーとして責任をもって、今後の対応をしますという説明がないわけです。
私は、その時も品質管理の仕事をしていて、何らかの、対応をするというような返事を期待していたのですが、そのような言葉は一切出ないわけです。埒が明かないので、
「こういう問題が起こって、どう対応するのか、文書で回答してください。」といって帰ってきました。
 後日、連絡を貰ったので、行ってみたのですが、加工会社名の謝罪・対策文をいただいたのですが、内容は、「工場での服装チェックを1日1回行っていたものを1日2回に増やします。」というものでした。
回数を増やして事故の確率は減るのかもわかりませんが、根本的な解決になるのか非常に疑問でした。
また、結局、その某スーパーの謝罪・説明文などは無しでした。私としては納得できなかったのですが、これ以上文句をいうのもクレーマーみたいで(半分クレーマーだったかもわかりません)、それで不承ブショウ、納得したことにしました。
 確かに、製品や部品を外注移管すると、その全工程に亘って品質管理状況を確認することは出来ませんし、また、自社での経験のない工程だったら品質のポイントもわからないのが本音でしょう。しかし、問題が起こったら、原因を究明し、また、原因がわからなくても、可能性のある事象に対して対策を立て、外注会社と一緒に品質改善に対して取り組んで行きます旨の挨拶を顧客に示すのが礼儀だと私は思っています。少なくとも私は、そういった姿勢で仕事を行っているつもりでした。
でも、この会社は違うんだな、と思いました。それも、人の口に入るものに関して、結構いい加減なんだな、と思ったものでした。
 そういう意味で、某スーパーの態度は、私にとっては納得のいかないものでした。少なくとも、私の某スーパーへの信頼感を下げる出来事でした。
 私でしたら、どうしただろうかと考えてみました。
まず、苦情発生を工場に伝え、工場品質監査に行きます。
 そこで、工場側の担当者と異常品の混入する工程を検討します。
過去・現在の不良の発生状況を確認し(不良記録、苦情記録から)、ある程度の不具合発生箇所の当たりを付けます。
その上で、現場を見て周り、リスクの大きな、工程、作業を抜き出します。
そして、その工程、作業に対策を検討します。
対策を取って、経過を見ます。
その結果、効果が出れば(一定以下の苦情率になれば)効果ありとして、お客様に一連の対策の経緯を説明して、一応の終了とします。
諸事情により、全容を説明するわけにはいかないかもわかりません。
しかし、何らかの対策の経緯は説明するべきだと考えます。それは、協力会社からではなく、お客様と接している会社であるように思います。お客様が信頼して購入している会社だからです。
実際には、そのような処置も並行して行っていたのかもわかりませんが、顧客に伝わらなければ信頼度はあがりません。
エアーバッグのリコール問題の際も、私の車もリコールで、エアバッグ部分を交換していただきましたが、私の購入先である”ホンダ”から説明を受け、”ホンダ”でエアーバッグ部分の交換をしていただきました。
”タカタ”からではありません。外注に頼るしかなくても、それは車メーカーの事情であって、顧客には関係のないことだからです。エアーバッグの件で、”タカタ”が対応してくれて、”ホンダ”から、何の文書もこなければ、”ホンダ”に文句を言っていたと思います。言わないまでも、次の車の買い替え時には、他メーカーを検討したかもわかりません。それが、お客様に対する品質保証であろうと思います。