品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

製品と安全性

 製品と安全性の問題は難しいもののひとつです。
これは、メーカーがコスト削減のために安全性に手を抜いているから、ということではなくて、お客様の要望と安全性とのせめぎあいの問題が大きいためでもあります。
 特に、趣味に係わる製品程、難しいように思います。
趣味に係わる機能を追究して、機能を最大限に引き出そうとすると、安全性をある程度犠牲にする、または制限しないと実現できない場合もあるように思うわけです。
 勿論、メーカーも安全性を犠牲にするつもりはないのですが、機能を追究していくと、せめぎあいになる場合があります。ユーザーが機能を優先する場合は、ユーザーの要望を取り入れないと、売れ行きに影響するという実情もあります。実際には、事故や不具合が起こったら、そこで世間で、「問題だ。」と言われ、規制を厳しくする。その規制を満足する製品に改善する。その状態で何年かして、それでもまた、事故や問題が起こったら、また、規制を厳しくする。さらに製品を改善する。というような繰り返しではないでしょうか。
 それなら、最初から、事故や問題のリスクを考えて、製品の設計をすればいいのに、と思うのですが、事故や問題の確率と発生した場合の損失を比較するということだけでも、いろんな場合があり、一様には比較できないのが、現実です。例えば、自動車事故ひとつとってみても、簡単には判断できないようです。1件でも死亡事故が発生すれば、自動車は、あらゆる事故を想定した安全装置を搭載しないと、発売すべきではないといっても、現状では不可能なようです。今、世の中を走っている車を、現状想定出来る事故を守るための安全装置を付けように改造するのは無理なようです。しかし、そうじゃない車は走ってはいけないといえば、公共交通機関(電車など)の整備されていない田舎でも暮らしが成り立たないのも事実のようです。
 結局、製品の利便性と、まさかの際に発生するかもしれない事故や問題の深刻さと発生頻度との兼ね合いになってしまうのかもわかりません。
 安全性ということに関して言えば、通常のお客様満足度の向上というような考え方(それも大事ですが)だけではなく、行政や世間通念上の判断というような、一業界だけの考え方だけでは終わらないような気がします。勿論、そういった考え方に逃げずに、業界、企業も真剣に考えるべきだとは思います。
 メーカー側で、ユーザーへの安全性のリスクアセスメント(製品の危険性を事前に抽出して、それを評価し、除去・低減するために行うこと)を行っていないということではありません。各業界、各企業で行っています。しかし、メーカー側の考え方と世間の考え方のズレがないかどうかということのチェックは必要だと思うわけです。