品質の改善

品質改善について、経験上いろいろ言いたいこと

品質向上のための材料の管理

 今回は、"4M"のなかで材料(Material)について、話をしてみたいと思います。
品質に関していうなら、材料の選定というのは非常に大事です。
新規製品の開発の場合がそうですし、苦情、リコールで変更する場合もそうです。
従来とほとんど同じ設計であるなら、材料も変更せずに、同じ材料を決定して終了となることが多いものです。
 しかしながら、よりよい性能を求めて改善したい場合は大変です。
通り一遍のチェックではだめで、あらゆる確認をすることが必要になってくることが多いわけです。
 例えば、アルミ材ひとつ取っても、JISで規定されている材料以外に、特殊な材料が存在する場合がります。
強度であるとか、耐久性であるとか、要望を相談してみると、「”○○材”とうのはどうですか?」と提案されることがあります。
「別の業界用に開発された材料ですが、ご要望の用途に使えるかもわかりませんね。」と提案していただける場合があります。
我々としても、従来の材料よりも優秀であれば、製品としては、業界他社よりもよりよい製品を出せるわけです。
ただ、"3H"(初めて、変更、久しぶり)の通り、初めての材料というものは、思わぬ落とし穴がある場合もあるので、いろいろなチェックを
行います。
 また、従来行っていなかったチェックが必要となった場合は、そのための測定機を導入することが必要になる場合もあります。
勿論、製品の仕様に関して従来のチェック方法や開発サイドの意見を取り入れたチェック、更に材料メーカーの意見も入れてチェックしていくことになります。
チェックの過程で、特性上問題が生じた場合は、材料成分の匙加減を調整して対応していただける場合もあります(いつもではありませんが。)
過去、問題になったことは
○材料の特性のバラツキ
○環境による変化(温度、腐食)
○製造方法による変動

 などですね。
 
 余談になりますが、このような、アルミ材などで、セミオーダー的な提案をしていただけるというのは、日本の材料メーカーの強みであると思いますし、日本で製造業を行っている私達製品メーカーの強みでもあると思います。
 またまた、話はそれますが、製造工程でいろいろな工具やセンサを使用しています。
それらのバリエーションの豊富さや、供給時間の早さ(故障、修理部品の届く早さ)なども日本国内は優秀だと思います。海外工場での遅さを聞いていると、余計にそう思います。
 以前に、開発メンバーと話したことがあります。日本国内で製品の開発や品質改善を行う強みはなんだろうかと。逆に言えば強みがなければ、開発拠点もろとも、海外に移してもいいわけです。
 その時に、話した結論は、
 ○ 日本というこの環境で、優秀な材料を手に入れることが出来ること。
 ○ 製造工程での優秀な設備を日本で素早く手に入れることができること。
 
 ということでした。勿論、我々も海外に伍して対抗しているつもりです。
 しかしながら、周辺、関連企業のサポートも大きいな、と思いました。
 
 

品質向上のための設備の管理

 "4M"というのは、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)という4つで、モノ作りの要素です。品質管理を考える際の要素なわけですが、最近、"4M"では不足だという人が出てきて、検査・測定(Measurement)を加える考えもあるようです。
合わせて"5M"と呼ぶ場合もあるようです。
 さて、今回は機械(設備という人もいます、Machine)について考えてみます。
設備が製品や部品の品質に影響を及ぼすのは勿論なのですが、設備といってもピンからキリまであるわけです。ネジ締めのためのエアードライバーから、プラスティック成型のための射出成型機や、金属板の成型用のプレス機械等、多種多様です。そういう意味で、業界も様々、機械も様々ということもあり、参考になる資料というのがあまりないのが現状です。
 私も、業務の関係で、品質向上や品質改善のためのマニュアル本などを探しましたが、なかなか見当たりませんでした。
 プラスティック成型のためのマニュアル本や資料などはあります。その中に、品質向上のための項目が数ページ載っていたりします。板金プレスのためのマニュアル本でも同様です。結局、それぞれが製造や設計のための本なわけです。品質管理のための本ではないわけです。誤解のないように言って置きますが、先ほどのように、品質のための内容も載っている場合もあります。ただし、200ページ位の本だったら、2~3ページといったところでしょうか。それらはピントの外れたものがほとんどです。
 それは、想定している業界が違ったり、また、対象サイズが違ったりでしょうがないこともあるでしょうね。
ではどうするか。まず、よく知っていると思われる人に聞くのが一番だと思います。例えば、講習会などで講師の先生に訊く。設備会社の人に訊く。エンジニアが一番いいのですが、サービスエンジニア、それもだめなら、営業マンでもベテランの人であるなら、結構知っているものです。そういう人に、品質管理のための設備管理の方法を訊いたほうが良いと思います。そうした場合、品質向上のために、といっても通じないかも

わかりません。相手は、品質管理のことをよく知らないかもわからないからです。

 具体的に、「バラツキを抑えたい。」とか「生産の精度を上げたい。」とかきくべきでしょうね。メンテナンスのことであれば、そのまま訊いたほうがいいでしょうね。

 そうして、設備管理の自社なりのマニュアルを作成すべきだと思います。
 また、設備が故障したら、そのときの記録を出来るだけ詳細に残して置くことだと思います。その記録を後で振り返ると、故障する時期とか間隔に周期性などパターンがある程度決まっていることが多いものです。
そういったことがわかれば、故障する前に消耗の多い部品を変えるとか、対策も立てれるものです。
 さらに、その設備の弱点が判ってくれば、買い替える場合は、その弱点をカバーしている機種に変更することも考慮でき、トラブル減少にもなります。
 私も、重要な設備にはメンテナンスノートを備え、記録していました。さすがに、全ての設備にとはいかなかったのですが、設備点検や管理には役にたったものです。
 そうして、設備の品質管理のためのマニュアルを作っていくことだと思います。まず、作ることです。
上司によっては、最初からちゃんとしたマニュアルを作るように言ってくる人もいます。しかし、最初からそれなりのマニュアルをを作成しようと思うと、まず出来ません。なぜか、こちらが良く解っていないので。
 そういうことで、項目は必要と思われる項目を書いて、内容は、抽象的に書いておくしかありません。
 例えば、「動作異常があれば上司に連絡する。」等。。。 そして、その時点で理解していることは、具体的に記入する。そして、だんだんと具体的にしていく(理解していく)。要は、少しづつ作り上げていくわけです。
 今の設備を今の製品用に使用しているのは我々しかいないわけで(多分ですが)、本当に役に立つマニュアルは我々しか作れないわけです。多分。。。

 

全数検査相当へ

 製品や部品の信頼性を確保するために、検査工程があり、不良品を後工程や、市場へ出さないようにしています。このように、製品や部品の品質を保証するための検査業務というのは、生産性からいえば、付加価値を生み出さないものです。なので、大抵の検査業務は全数検査をせずに、抜取検査で済まされています。それは、時間的なもの、コスト的なものから来ています。抜取検査といっても、検査対象となるロット当たりの数に対して、検査する数を適正に設定することで検査の確からしさを確保することはできます。このあたりの抜取検査の方法や、不良率をどこまで抑えるかなどはJISなどで確立されています。
 ただ、安全性から見て重要なものや、機能から来て重要なものは全数検査されることもあります。時間とコストはかかりますが、全数検査を行うことは勿論あります。
 リコール後に一定期間、全数検査を行うことなどもあると思います。
 
 このように、全数検査を行うほうがいいのは確かなわけで、項目は限定されますが、全数検査を行う方法はあるわけです。
 この方法も昔から、行われている方法があるわけで、"ポカヨケ"という方法です。
例えば、切削忘れの部品をベルトコンベアの途中で狭いスキマを設け、切削忘れの大きな部品を次の工程に流れないようにするなど、要するに自動検査ですね。基本的に「検査時間無し」で検査を行うわけです。「検査時間無し」というのは、企業からすると魅力的な方法です。どの検査でもできるというわけではないのですが、いろんな工場で、現場の創意工夫によって、いろいろな"ポカヨケ"の方法が行われています。
例えば、
1.治具に間違った方向ではセットできない。
2.やることをやらないと製品をとりはずせない。
3.ワッシャーを入れた高さを見れる(確認できる)

 など、いろいろあると思います。
最近ではIoTを使用した治具・工具もいろいろあるみたいで、決まった部分のネジ締めを行わないと、次の工程にいけないなどの方法もあるようです。それらの治具は、自社製品ようにカスタマイズできるものもあるようです。
 製造工程での話ではありませんが、スーパーのレジで、買い物かごは赤い色だが、レジを通過すると黄色に変えるとかも一種のポカヨケかもわかりません。(スーパー側からの無検査チェックでしょうか)
こういったやり方や治具類を使用することで、検査相当の業務(それも時間を使わないで)を行えることはあるので、いろいろ工夫するべきでしょう。

 

不良を防ぐための心構え

 不良を防ぐための心構えを考えた場合に、いろいろありますが、大きくは
次の3つを言われることが多いように思います。それは、

1.3H
2.4M
3.5S

 です。"3H"とは、初めて(Hajimete)、変更(Henkou)、久しぶり(Hisashiburi)という言葉の頭文字
です。これは、不良を出しやすい(出やすい)タイミングなので、気を付けましょうと
いうことです。製品や工程が変化するときは、不良や問題がでるものなので、気を付けましょう
ということですね。変化点に気をつけろということです。
 "4M"というのは、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)という4つで、
モノ作りの要素です。"人"で考えると、初めて作業する人、作業員が変わった場合、
久しぶりに作業を行う人などはそのまま作業に向かうと不良が増える傾向にあるので、
作業手順などの見直しをしてもらう、理解できていないところや、忘れてしまっていることなどがないか
確認するということです。
 機械や材料、方法なども、初めての場合や、変更になった場合、久しぶりに行う場合は、確認や
見直しを行うということでしょう。そうしないと不良が増えますよ、ということですね。
要するに、4Mは不具合の要因になるので、変化時には気を付けましょうということです。
 "5S"は、工場などでは基本的なことなのですが、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、
清潔(Seiketsu)、躾(Shitsuke)という5つの言葉の頭文字を集めたものです。
 
5Sとは、
 整理------要るものと要らないものを区別して、要らないものを処分する。
 整頓------要るものを使いやすい場所にきちんと置くこと。
 清掃------身の回りの物や職場をきれいに掃除して、いつでも使えるようにすること。
 清潔------整理・整頓・清掃を維持し、きれいな状態に保つこと。
 躾---------職場のルールや規律を守り、習慣づけること。
 と言われています。
 5Sとは、業務効率を上げる方法だと思うのですが、それを進めて、経営効率を上げることだと
いう人もいます。
 簡単に言ってしまうと、生産や業務のための準備が出来ていることだとおもいます。
 例えば、4Mの内の機械(Machine)でいえば、
3Hのタイミングで、機械について、5Sを徹底することで、不良や不具合を未然に防ぐことだと思います。
4Mの他の要素でも同じです。そうすることで、不良を防いでいくわけです。
 不良を未然に防ぐためには、3H、4M、5Sをシステマティックに行っていくための、仕組みを作り、
具体的な手順を作っておかないと、なかなか簡単には出来ないのですがね。各社、知恵を絞り、汗を流して
実行されているのだろうと思います。

 不良を未然に防ぐ心構えとして書きましたが、結局、気を付ける時期と要因と、さらに実行する徹底さになりますかね。

 

製品と安全性

 製品と安全性の問題は難しいもののひとつです。
これは、メーカーがコスト削減のために安全性に手を抜いているから、ということではなくて、お客様の要望と安全性とのせめぎあいの問題が大きいためでもあります。
 特に、趣味に係わる製品程、難しいように思います。
趣味に係わる機能を追究して、機能を最大限に引き出そうとすると、安全性をある程度犠牲にする、または制限しないと実現できない場合もあるように思うわけです。
 勿論、メーカーも安全性を犠牲にするつもりはないのですが、機能を追究していくと、せめぎあいになる場合があります。ユーザーが機能を優先する場合は、ユーザーの要望を取り入れないと、売れ行きに影響するという実情もあります。実際には、事故や不具合が起こったら、そこで世間で、「問題だ。」と言われ、規制を厳しくする。その規制を満足する製品に改善する。その状態で何年かして、それでもまた、事故や問題が起こったら、また、規制を厳しくする。さらに製品を改善する。というような繰り返しではないでしょうか。
 それなら、最初から、事故や問題のリスクを考えて、製品の設計をすればいいのに、と思うのですが、事故や問題の確率と発生した場合の損失を比較するということだけでも、いろんな場合があり、一様には比較できないのが、現実です。例えば、自動車事故ひとつとってみても、簡単には判断できないようです。1件でも死亡事故が発生すれば、自動車は、あらゆる事故を想定した安全装置を搭載しないと、発売すべきではないといっても、現状では不可能なようです。今、世の中を走っている車を、現状想定出来る事故を守るための安全装置を付けように改造するのは無理なようです。しかし、そうじゃない車は走ってはいけないといえば、公共交通機関(電車など)の整備されていない田舎でも暮らしが成り立たないのも事実のようです。
 結局、製品の利便性と、まさかの際に発生するかもしれない事故や問題の深刻さと発生頻度との兼ね合いになってしまうのかもわかりません。
 安全性ということに関して言えば、通常のお客様満足度の向上というような考え方(それも大事ですが)だけではなく、行政や世間通念上の判断というような、一業界だけの考え方だけでは終わらないような気がします。勿論、そういった考え方に逃げずに、業界、企業も真剣に考えるべきだとは思います。
 メーカー側で、ユーザーへの安全性のリスクアセスメント(製品の危険性を事前に抽出して、それを評価し、除去・低減するために行うこと)を行っていないということではありません。各業界、各企業で行っています。しかし、メーカー側の考え方と世間の考え方のズレがないかどうかということのチェックは必要だと思うわけです。

 

品質管理で法令

 品質管理部門にいて、何に一番気を使うかといわれると、"ルール"、つまり、製品やサービスが色々な規制、規定に違反していないかということです。
以前に、日本企業の品質不正などが色々いわれた際に、経営雑誌にかかれていたことがあります。
企業ビジネスで大切なことは何か。
 そのときに、「LSQDC」だと記されていました。
 これは

L ------ Law(法規、ルール、コンプライアンス
S ------ Safety(安全、顧客の安全、従業員の労働安全衛生)
Q ------ Quality(顧客の満足できる品質で製品、サービスを提供する)
D ------ Delivery(納期、約束した期日までに納めること)
C ------ Cost(顧客のの望む価格で納められるよう努力すること)

です。

 一番目に、"ルール"としてのコンプライアンス(法令や規則をよく守ること。法令遵守。)が挙げられています。品質管理部門だからというのもあるかもわかりませんが、"ルール"を何につけ、気にせずには居られません。
 市場に出すためには、世の中の法律や条例を守らないといけません。
国内、海外の国による色々な法規制を守っているか確認しないといけません。
これは、法令を守っていないと、即、リコールということもあるからです。
リコールも、車などでは、当たり前のように報道されて、あまり注目されなくなっています。
しかしながら、一旦、自社で問題を起こすと大変です。まず、経済産業省に届を出さないといけません。
ユーザー向けに、主要大手の新聞(通常4社です)に掲載記事を出さなくてはいけません。記事の大きさにもよりますが、1社で一千万円はかかるのではないかといわれています。(詳しくは知りませんが)
さらに、問題品の回収費用、修理費用、改善に要する費用などで大きく損失を出してしまいます。以前にわが社でリコールを出したことがあるのですが、多くの製品の内の1モデルだけだったのですが、総費用は億を超えていました。車などでは、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。相当な費用でしょうね。
 また、それ以外に製造工程で規制を受ける薬品などの確認をする必要があります。社内だけでなく、取引先の工場内でも確認しないといけない場合もあります。製品とは別に、工程で使ってはいけない薬品もあるわけです。または、使う場合に、いろいろな届を出したり、管理をしないといけない規制もあります。
 さらに、当たり前ですが、社内規定に違反した業務は出来ません。品質と直接関係はないかもわかりませんが、勿論、"セクハラ","パワハラ"はダメです。
 それに、社内規定を遵守しているかどうかの問題です。品質管理システム(ISO9001などで)で決められている規定を守っているか。
 などなど、コンプライアンスといっても、大きなものから、ちょっとした手順書違反などまで、種々あります。
 こういった決まり事を守る(守らせる)ことで、品質を維持したり、向上させているのですが、他部門の人からはあまり理解されないのは、寂しいことです。"ルール"には大抵、理由があって決まっているのですが、自分の勝手な判断で、無視してしまう人が時々います。確率は低くても、"ルール"守らないことで、引き起こした結果の責任を一人で引き受けられない場合はどうするつもりなのでしょう。他の人にも迷惑をかけてしまうかも知れない、ということも考えていただきたいと思ってしまいます。

 

品質管理の中の日常管理

 品質管理の仕事の中で重要な仕事のひとつに「日常管理」というものがあります。
標準どおり仕事をおこない、その中で標準化の不完全さを見つけたり、改善活動をおこない、それらを標準書などに追加、改訂をおこないます。 
「日常管理」の対象は「異常」です。 
「日常管理」では、通常の状態から大きく外れている状態をみつけ、確実な原因追究をおこない、再発防止をおこなうことが重要です。 
日常管理というのは、重要な業務なのですが、どちらかと言えば地味な業務です。
どちらかと言えば、「やって当たり前、問題が起これば、何をしていたんだ。」と言われかねない業務です。しかしQC工程表や作業標準書などの通りに行っていて、問題が起こるのだとしたら、

1.想定外の事態が起こった。
2.作業標準通りに行うことが難しかった。
3.作業標準通りにおこなったが、結果は良くなかった。

などの原因が考えられるわけです。

1.の想定外の事態がおこったのだったら、今後はその事態を想定内とした、対策を立てないといけません。当然ながら、QC工程表や作業標準書も変更する必要があります。
 2.の、作業標準書通りに行うことに無理があったのであれば、作業標準書に無理があったわけなので、作業標準書の変更を行なわなければなりません。
 3.作業標準書通りに行ったが、結果が良くなかったのであれば、作業標準書に間違いがあったわけですから、こちらも、作業標準書を変更する必要があります。
 こういった、ことは日常の業務ですが、おろそかにしていると、品質はどんどん低下していきますし、作業効率も良くなりません。

こうした日常管理の場合、通常は少しずつ悪くなっていくことが多く、気づくのが遅れがちです。すぐ気づくようにするためには、管理限界を決めておき、限界を超えたらすぐ気づくようにしておくべきでしょう。そうしないとずるずると進行してしまいがちです。
 例えば、工程の不良率が5%を超えたら、手を打つときめておくとか。また、そのためには、毎日不良率をモニターしておかなければなりません。また、できれば、だれが、いつ、報告するのかも決めておくべきでしょう。というのは、大きな問題が起こったというものでなければ、正直、係わりたくない、というのが本音です。皆、それぞれ忙しい仕事を抱えて仕事をしているわけで、出来ればこれ以上仕事を抱えたくない、というのが正直な気持ちです。しかし、日常の変化は、時々刻々とどうなるかわからないわけで、問題があるときは、すぐに手を打たないといけません。
 これは、職場の仕組みの問題でもありますが、上司の部下に対する姿勢の問題でもあるのだろうと思います。5Sでいうところの躾(しつけ)になるのかもわかりません。こういったことを、部下が当たり前のように行動できるように、日頃から言い聞かせていること、時々確認していること。部下は日頃からこういうことを当たり前のようにできるように、習慣化するように行動していること、となるでしょうか。日頃の習慣として出来ているかということは、業務の仕組み(システム)として出来ていないと
いけないですし、上司が部下に対して習慣化させていないといけないですし、また、部下は習慣として自然に行動できていないといけないわけですし、大変です。

 

 

 

品質管理に必要な統計知識

 品質改善を行う際に、統計的知識は必要か。
この質問には、はっきり答えることは難しいですね。
企業によって品質管理のやり方が違うので、一概に言えないような気がします。
 他の企業のやり方をあまり知らないので、私の会社の話をします。
10年程前になるでしょうか。新しく、品管部長に就任された方が外部の色々な品質管理の講習を推奨される人でした。現状のやり方に不満があったのだと思います。
 QC七つ道具であったり、新しい手法の講習会であったり。指名された人もいたようですが、私は声がかかることもなく、日常業務では、あまり変化はありませんでした。
 しかし、1年程してから、品質保証担当で、中途入社の方が入ってきてから、さかんに工程能力が話題に上るようになりました。この人は、前社では、工程能力を工程の品質評価として当たり前に使用していたということでした。
 それから、新製品の立ち上げ時には、工程能力を一定以上クリアしていること、という基準が設定されるようになりました。
 それからは、工程能力の復習です。いや、勉強です。ほとんど使ったことがなかったのですから。
工程能力指数というのはExcelで計算できるらしい、とかいう話が伝わり、工程能力指数を計算するexcelファイルが紹介されるようになりました。社内イントラネット掲示板に掲載されているので使え、ということなのですが。
 工程能力指数ということになると、最低の知識として、
 
1.正規分布というものを理解すること。
  (例えば、測定したデータは、正規分布のように、バラツクらしいということを憶える、
   理解しなくてもいいです。)
2.データのバラツキの程度を知るために、標準偏差を計算すること。
   (バラツキの程度は標準偏差で掴めるらしいと憶える!)
3.工程の品質の程度を掴むために、工程能力指数を計算する必要があることを憶える!
   (工程能力指数は標準偏差と規格の上限と下限で計算される、詳しい人が作ったExcel
    ファイルで計算できることを憶える!)

でしょうか。

 以上のことを憶えれば、統計の知識はなくとも、とりあえず工程能力指数を計算して
工程の品質の良し悪しを判断でき、製造に対して改善して下さいといえます。
統計の知識の最低ラインですが。
 後は、Google先生に訊いたり、品質管理の実用書を覗いて、知識の肉付けを行うことになるかと思います。私の周りは工学系の人が多かったので、文系の人の苦労はあまりわからないのですが、どうなのでしょうね。
 といっても、私も元々は電気工学なので、統計など、系統だって教わった記憶はないのですが、どうなのでしょうか。仕事では、理解するよりも、とりあえず、慣れろでやってきました。
 ただ、理解できていないと、つらいのは確かですね。仕事である限りは、まず結果を出さないとしょうがないのですけど。
 QC七つ道具なども、個人的には書物で勉強しましたが、どういうときに使うべきか、ということがあまりわかりませんでした。現実の問題にぶつかった際に、どうしたら解析できるのだろうと悩んだときに、Google先生に教えてもらった、というのが本当のところです。重点指向にはパレート図がよいとか、現象の見える化で理解しやすくするにはグラフ化がよいとかですね。まあ、せっぱつまらないと、本気で理解しようとしていないのかもわかりません。
 そいう意味では、部門の方針や、現実の問題で否応もなく勉強するというのが、統計の知識に限らず、そういったものかもわかりません。結論としては、何が必要なのかではなくて、必要なものを勉強するしかない、という経験論になってしまいました。


 

品質向上でコスト低減になるのか

 品質改善を行う際に、品質を向上させることで、コスト低減に結びつくのか?と疑問に思うことがあるのは確かです。これを言ってしまうと、品質管理部門の人間としては、身も蓋もない、ということになってしまうのですが、企業人としては、いつも悩みながら仕事をしているのが実情です。
 勿論、品質管理部門の建前としては、「お客様の身になって、満足していただける製品やサービスを供給する。」というのが目的です。

 そのためには、問題が発生した場合は、とりあえず、コストアップや思わぬ経費が発生しても、品質上問題のない製品やサービスを市場に供給しなければなりません。そうして、次回からは、問題を起こさないように、(同じ轍を踏まないように)未然防止の対策をたてて、不具合を発生させないように、また余計な経費やコストを掛けないように、企業としての利益を確保するように計画を立て、実行していくわけです。
 しかしながら、市場でのトラブルが続くと、弱気になることがあるのも事実です。
通常、よほどのことがない限り、問題を起こす製品は、そう多くなく、その他の製品はそれなりに利益を確保しているものです。しかし、中には、問題を続ける製品もあるわけで、そういった製品を担当している社員は大変です。問題の遠因はいろいろあります。
 そもそも、設計能力が不足で、お客様の要望に応えられていない。
 製造技術が不足で、やはり、お客様の要望に応えられていない。
 営業力が不足で、市場の要望を吸い上げきれていず、魅力的な製品となっていない。

 結果、売り上げが振るわない、苦情品が多いなどということが、続けば、最悪、市場からの撤退ということもあり得るわけです。
 
 こういったことは、経営判断も必要なことで、どこまで品質管理部門がかかわれるかというのは難しいところです。
 
  過去、私が担当していた製品も似たような状況になったことがあり、次回に出す製品に改善が見られなければ撤退もやむなし(この製品のシリーズだけですが)という話が、経営陣から出たことがありました。

 苦情が多い。
 魅力がもう一つ(売れ行きがもう一つ)。
 今のところ、先行き改善の見通しが立たない。
 
 というもので、企画・開発の意見としては、
 まず、魅力創出(新機能創出)、苦情見直し(慢性苦情の撤廃)というものでした。
 そのためには、当面の利益を削ってでも、売り上げを伸ばし、その後、3年計画で利益確保を図るというものでした。まず、市場で魅力があると認めて貰わないとダメなので。
  品質管理部門としても、苦情削減は大歓迎で、過去のトラブルのまとめと削減案のとりまとめ、また、新機能の品質的な未然防止(出来る範囲ですが)を検討しました。
 結果、新製品投入後に、新機能ゆえの苦情は出たのですが、設計との連携ですばやい設計変更による不具合対応ができたと思っています。また、従来からの慢性的な苦情はほとんどなくなりました。
 さらに、利益を削ったことによる、コスト削減の効果もあり、新機能の好評と合わせ、売れ行きは大きく伸びました。
 こういった、売れ行きの伸びによる、量産効果もあり、その後ですが、コスト削減も進み、利益改善もできました。
 結果的にですが、品質向上によるコスト低減は出来たのかな、と思います。
 ただ、製品がなくなるかもしれないという、危機がいい意味で、部門を超えて、連携できたことは大きかったと思っています。結果的に、品質を向上させてコスト削減を達成できたのですが、そうなるまでには、全社的な協力体制と色々な部分での創意工夫が必要であったと思っています。ものの本に書いてあることは、いざ実践となると大変です。しかしながら、みんなで本気になれば、可能でもあるのだな、とも思います。
 

品質管理と数値化

 品質改善を行う際に、数値化というのは重要だと思います。
無理やり数値化するのは問題ですが、数値化できると、後々のデータ処理が飛躍的に向上しますし、関係者の理解の共有がしやすくなります。逆に言うと、数値化できていないと、共有できていない可能性があるわけです。
例えば、果物の糖度ひとつとっても、糖度計で「○○度」と確定できるからいいようなものの、現物を食べてみて、確認しても、みんな同じものを食べている保証はないわけです(それぞれバラツキがあると思われるので)。
そこで、数字で出せれば、目標を決める場合も、決めやすいですし、数値化できるのであれば、数値化すべきでしょう。
また、官能評価するような品質についても、ある意味「見える化」できるわけです。

さらに、品質上の問題をはっきりさせるときに、数値化して、明確にしていくことは多いものです。
また、グラフ化やいろいろなQC手法も、数値化できていると使いやすくなるのは事実です。
 勿論、元々、数値化しにくいものもあり、その場合はまた別のQC手法もあります。
 ただ、数値化できるものは、数値化すべきでしょう。
 私の経験からも、問題点となる事象を数値化すると、今後の対応が明確になります。
 例えば、以前、部品ユニットの密閉性が問題になったことがあります。防水で、苦情が多発したのですが、苦情品の密閉性を確認していませんでした。簡単にチェックできる器具がなかったからです。
  試作品などをチェックする器具はあったのですが、確認するためには、製品に穴を開けて確認する必要があり、なかなか大変で、苦情品に適用するには、時間的にも大変で、チェックできていなかったのです。
  しかし、苦情品がどれ位の耐圧があるのか、確認すべきだと思い、簡便に使用できる、治具を作成することになりました。
 それからは、苦情品が返ってくるたびに、耐圧を確認し、数値で確認することで、規格に対してどれ位すくないのか、規格ぎりぎりなのか、確認することができるようになりました。
   結果的に、規格ぎりぎりの苦情品も以外にあることがわかりました。
  そこで、規格そのものを引き上げて、余裕を持たせることにしました。これは、製造のバラツキも考えて、多少のバラツキがあっても、OKとなるようにしようということからです。
 このように、問題となっている現象を、数値で捉えることは大事です。バラツキの状態とか、規格の余裕の有る無しなども、明確になります。もめている現象こそ、数字で捕まえることでしょうね。また、バラツキの具合や、規格との余裕などもしっかり把握するべきです。
 しかしながら、数値化するためには、道具が必須となります。そういう意味で、品質管理というのは、測定機器、治具をいかに揃えるかということも、非常に大事です。勿論、このことも品質管理部門だけで出来ることではなく、関連部門(生産技術など)や
付き合いのある測定機器業者や、測定機器の展示会なども覗いてみるなど、そういった情報も仕入れていくべきだと思います。
 個人で入手できる情報は知れているので、色々な方面にアンテナを張っておくべきだと思います。こういった情報を掴んでおくことで、必要となった確認方法が、適正な経費で実現できるのかどうかというようなことも判断できるようになっていきます。
 
   
   

品質改善では重点指向で

品質改善を行うときに、苦情などの不具合項目がいろいろあり、全ての項目を是正するには、時間もかかり、経費もかかるので、どれから手を付けていけばいいのか迷うことがあります。
 こうした場合、品質管理では、重点指向で取り組むように言われます。
苦情などの場合、件数の多いものから、棒グラフなどで並べてみるわけです。こうした場合はパレート図が便利です。件数の多いものから順に並べた棒グラフと、件数のパーセンテージの累積曲線を折れ線グラフで表したものが、パレート図です。パレート図では、
1.件数の多い項目は何か。
2.件数の多い項目のいくつかで、全体の苦情の何パーセントを占めているのか。
 
 を一目で知ることが出来ます。
要は、同じ改善を行うなら、改善効果の大きなものからやりなさい、ということですね。
 勿論、これらとは別に、重大な苦情というものも発生することはあります。
1件でも発生した場合は、直ちに手を打たないといけない苦情というものもあります。
こういった苦情は直ちに処理しないといけません。(通常はリコール処理を行うことになると思います)
 それら特別な場合を除いて、一般的には先ほど述べたように、件数の多いものから重点的に対処していくことになると思います。
 今期は件数上位の二つを解消しよう、などと目標を立てるわけです。

 目についたものから取り掛かっていても、一生懸命やっても、小さな効果しか得られなければ、メンバーのやる気が減退します。、なにより、工数、費用などの損失が発生します。投入できる資源を有効に活用し、最大限に効果が出る対策を行う必要があります。そのためにも結果に大きな影響を与えている原因を追求し、優先順位をつけて重点的に対策していくのが重点指向の考え方です。

 単純に、件数だけでなく、緊急度や他の製品への影響度や拡大傾向なども考慮する必要はあります。
そういう状況も当然ながら、考慮する必要はあります。
 しかしながら、基本的には、苦情件数の多いものから対処していくべきです。
 
 以前に、苦情率がワースト1だった製品を、重点指向で改善していくことで、3年でワースト8まで下げることができました。
残念ながら、ワーストランキング10から外すことは出来なかったのですが、苦情率では8%位から、1%位まで下げることができました。
まずは、苦情件数で上位3項目の苦情について、対策を行い、設計、製造、検査の部分で改善を行い、苦情削減を行ってきました。
その後も、引き続き、改善していくつもりだったのですが、担当が変わってしまいましたので、その件からは外れてしまいました。
 しかし、限られた資源である、ヒト、モノ、カネ、時間を有効に使って、最大の効果を上げるには、重点指向は大事であると思っています。また、パレート図は、Google先生に聞けば、Excel例なども教えてくれますので、興味のある人は訊いてみてはどうでしょうか。重点指向を「見える化」する場合は、非常に役に立つと思います。

 

品質問題解決のスタートは

 品質問題解決のスタートはまず「分けること」でしょう。
必ずとは言いませんが、「分けること」から始めることは多いです。

 いろいろなことが組み合わさっていると、何が何だかわからないので、まずは、いろいろ分けてみて、解決のきっかけをさがします。
 問題現象の原因を探すために、いろいろ分けていきます。
 苦情品だったら、販売した地域で特徴がないか。
生産した時期で、共通性がないか。
苦情品に添付されているコメントで共通性がないか。
異常が起こっている製品の不具合と思われる機能に関連していると思われる部品が共通していないか。
 これらの原因を探っていくために、細かく分けていくわけです。
このようなときに、Excelでのピボットテーブルで分類分けしていくことが多かったように思います。
勿論、棒グラフなどで、視覚化して解りやすくします。これは、会議などでは、理解の助けのためには大切なことです。
 後は、分類分けを続けて、不具合の原因にたどり着くように、解析していくわけです。
そこで、分類分けしていく際は、経験や周りのアドバイスも参考にしていくことで、より原因にたどり着きやすくなると思います。
 以前に、苦情品で返ってくる製品が、確認してみると異常がないというものがいくつか返ってきました。
お客様は、「おかしい!」と、おっしゃっているのですから、異常なことが起こっていると思われるわけです。
 北海道地域からの苦情が多いことで、よく調べると、冬場に多いことがわかりました。
これは、低温で問題があるのかも、ということで、低温でテストしてみると、低温で機能していないことがわかりました。
そこで、使用部品の保証温度がもともと、低温部をカバーしきれていないことがわかりました。
ただ、在庫品を調べてみると、全部が全部だめなわけではないわけです。
 しかし、今までの製品に比べて、不具合の割合が多いことがわかりました。今までの製品は、それほど苦情として返って来ないので、見逃していたようです。どうも、今回の製品と問題の部品との組み合わせで、不具合が発生することが多くなっているようです。
 そこで、問題となっている部品を、設計変更で変えることで、不具合を解消しました。
当然ながら、候補部品のいくつかの確認実験の結果も、「分けること」で、優劣を判断していくことになります。
 このように、原因追究のためには、色々な分類分けを行い「分けること」で、突き止めていくわけです。
 そこには、推定や仮定もあり、また、色々な試行錯誤の条件設定を行った確認実験もあります。
 それに加えて、Excelでの表による分類分けの表やグラフでの見える化を行うことも、推定や仮定の助けになります。
 いずれにしても、品質問題、品質改善のための事象解析のための基本は「分けること」であると思います。
「分けること」から初めて、その他のQC手法も使いながら、希望する目標に進めていくわけです。

 

品質苦情はなぜ起こるのか

 品質苦情はなぜ起こるのか?
 これは、私が品質管理担当になって1、2年の頃、苦情品を担当した営業担当者からの質問です。
質問というより、文句ですね。彼と話したのは電話でだったのですが、
「なぜ、欠陥品が市場に出てくるのか?」ということです。
そのときの私は、兎に角、検査で流出したのだと思われること、問題の検査項目は抜取検査項目だったので、検査で流出する可能性はあるということも正直に説明しました。この時に、検査項目は、それぞれ過去の実績(苦情や工程不良などの結果)から、抜取検査でもOKと思われるもの、その中でも検査数を多くすべきもの(検査数に応じて変わります)、全数検査すべきものと変えています、と詳しく説明すべきかと思ったのですが、電話口でそこまでの説明は出来ませんでした。
 彼からは、兎に角、検査は全数検査にしてください、の一点貼りなわけです。勿論、今回の苦情は、応急処置として、問題の検査項目は当面、全数検査を行います、との説明をしました。なおも、彼は他の検査は全数検査をするべきだ、と言って譲らないわけです。「俺たち、営業の苦労を解っているのか。」
というわけです。その後もいろいろ話をして、不承不承、納得してもらったわけです。
 その時は、私も検査は本来、全数検査をすべきかな、とも思ったわけです。しかし、全ての製品に対して、全部全数検査をするとなると、検査時間を考えるだけで、従来の検査時間の数倍も要するわけで、とても仕事にならないわけです。そのようなことを上司に相談したところ、今回の問題は、入荷した部品の寸法不具合が原因で、出荷元の業者の工程も手を打っていること、出荷検査も当面全数検査にすることは決まっているとのこと。また、組み立て工程での工程検査も全数検査にしたこと、また、製品検査も
前述のように、問題の項目は全数検査にしたことで様子を見ようと言われました。とりあえず3か月経過を見ようといわれました。さらに、営業には迷惑をかけたが、リコールとなる苦情でもない(苦情内容でも苦情率でも)ので勘弁して貰おうといわれました。上司からも、その営業所には電話しておくとのことで、お任せしました。
 さて、今回の苦情の原因は、
 
 部品の加工不具合が発生したこと。
 部品の出荷検査に抜けがあったこと。
 組み立て工程でのチェックがいい加減であったこと。
 製品検査を潜り抜けてしまったこと。(抜取検査だったため)

 苦情の数は少なかったのですが、少ないことは、抜取検査では検出しくくなるのは、あります。
 元々、流出しない検査計画でなければならないのですが。
  当初の、この検査計画で行けば、不具合品は流出しないはずだ、という目論見が外れたのですから、検査計画の見直しが必要になるわけです。
 その修正は、部品加工工程の見直し。
 部品検査の見直し
 組み立て工程の見直し
 組み立て工程のチェック方法の見直し
 製品検査の見直し
 
ということになります。
 これで様子を見ます。
 
 蛇足になりますが、厳しいことを言うようですが、全数検査をして、苦情が皆無になるかと言えば、そうとも限らないのが(通常、"0"にはなりません)難しいところです。
 それは、検査項目にない不具合がある場合は、検査をすり抜ける(不合格にならない)からです。
 どういうことかというと、検査項目を作成する際に想定していないことが発生した場合は、検査で止まりません。そういう問題が市場に出てから、発生することは、稀ですがあります。
 そういう場合は、検査基準書に、その項目を直ちに加えて、検査するようにしなければなりません。こういうことは、3H(初めて、久しぶり、変更)の設計や作業では、得てして発生するのも確かです。
通常の業務よりも、計画、実行段階での確認はより慎重にすることが求められます。
 
 

計測の際のSI単位系

 品質管理、品質保証の業務の中で行う測定時には、原則として、SI単位を使用しています。
1992年(平成4年)に計量法が制定されて、原則として、SI単位系(国際単位系)を使用する
よう推奨することになりました。ただ、取引や証明では規定されます。SI単位系でないとダメになるわけです。ではSI単位系とはなにかということは、Googleで検索すれば詳しくわかると思います。ISO9001の測定器の校正では、SI単位での測定が必要になります。
 測定機器の買い替えなども行いました。必ずしも買い替えの必要はないのですが、証明用の測定時はSI単位系の使用が必須ですし、SI単位系の測定器にシフトしていきました。
製造工程内の測定や、勿論、検査時に使用する測定機器もSI単位系に変更していきました。
 一番よく使用する、
1.力の単位
2.圧力の単位

 が、大変でした。
 力の測定は、押し力や引き力、張力など、測定の基本ともいうべき、よく行われる測定です。
簡単なものでは、バネばかりで製品の操作レバーを押してみて、どれ位で動き出すか測定するなど、頻繁に行います。この測定が、以前は○○Kg(明確にするためには、Kgf,キログラム重)と記録します。
SI単位系では△△N(ニュートン)に変わるわけです。単位の文字が変わるだけならいいのですが、数字も変わるわけです。
 例えば、1.00Kgfなら、同じ値が9.8Nに変わるわけです。
 
2.の圧力はもっとややこしくて、1.0Kgf/cm2(キログラム重/平方センチ)だったものが、0.098Mpa(メガパスカル)
  となるわけです。
 
 また、1.の力とは違うのですが、質量がなかなかこんがらがるのです。
というのは、工学単位系では力の単位である重量をそのまま質量として使用していました。
例えば、私の体重を60KgfとするとSI単位系でも60Kgです。ここで、工学単位系であるという意味で最後に「f」を
付けています。数字としては、同じく60なのですが、校正などの際は気を使います。というのは、質量というのは、私たちは、直接測れないものなのです。実は、地球の重力を利用して、重力という「力」を測ることで、間接的に質量を測っているわけです。つまり、物理学でいうところの、

  F=m・a
  m=F/a
  
 重力(F)を測ることで、重力加速度(a)を利用して、質量(m)を換算しているわけです。
  通常は、意識することはないのですが、校正などをする場合に精度が必要な場合は問題になる場合があります。
 通常の台秤は、内蔵されている「力」を測るロードセルで(F)を測っているので、結果の数字(当然、換算された (m)が表示されますが、ここで利用する重力加速度(a)は地域で微妙に変わります。北海道と沖縄では0.14%程度変化するといわれています。沖縄の方が、数字は小さくでます。(秤は地域別に調整されています。)100Kgに対して140g程度と言われているので、通常はほとんど問題ないと思いますが。その程度の差が気になる(影響を及ぼす)計測では特別な考慮をすべきでしょう。
 
  計量法も制定されて20数年たちますが、今でも、工学単位系を使用している業界が多いのも事実です。
  取引や証明などの記録にはSI単位でなければならないのは事実ですが、民間での単位となるとどうなのでしょう。
 狭い業界では、いまだに、古い単位系で話のやり取りがされていることも多いかもわかりません。一部の取説などで最初はSI単位と古い工学系の単位が併記されていたものが、工学単位系だけに戻っているものを見受けたりします。
 お客様がこちらに馴染んでいるのであれば、しょうがないかもわかりません。
 

品質管理の本筋

 品質管理、品質保証の目的とは何か。
お客様の満足度を上げることです。
単純に言えば、ライバル他社の製品やサービスより良いものを提供することだと思います。そうすれば、お客様は喜んで下さり、その製品やサービスに対価を払って下さります。
これは、言うのは簡単ですが、行うのはなかなか大変なことです。
製品やサービスを販売、提供する行為は、後向きにボートを漕いで、前に進む行為だといった人がいます。新製品を市場に出した後の、市場の様子や売り上げ、評判、苦情などは進めてみて初めてわかります。市場に出す前に、色々な検討を行いますが、出してみないと解りません。実際に受け入れられるかどうかは、結局は市場に出してみないとわかりません。
出してみて、思ってもみなかった苦情や問題が発生することがあります。
苦情や問題に対しても、いろいろ想定して対策をしているのですが、そういった対策の上をいっていたり、思ってもいなかった方向から発生する問題だから苦情となるわけでもあります。
 そういう意味で、未然防止ということが一番いいのですが、これは本当に大変なことです。
ある大学の先生は、未然防止というのは、起こっていない事故を創造することだ、と仰っています。世の中に起こっていない事象を空想の世界で想像し、なおかつその事象の防止対策案を考え、現実化する。
新製品を出す前に、こういうことを考えて未然に防止する(主として、設計者に考えさせるのですが、お前も考えろ、と設計者に怒られることもあります!)。
 いろいろな情報や、経験者の話、苦情品の例などを頭に叩き込んで、何日間かすると、それなりの解決策が浮かぶことはあります。無意識の中に、いろいろな情報がうまく組み合わさったのか、過去の似通った事例がうまくアレンジされているのかはわからないのですが。ただ、このようなアイデアが出てくる確率は低いので、現実的には、過去の似通った事例を実際に調べて、アレンジして未然防止(かどうかわかりませんが)らしきものを対策として具体化していくことになります。
 しかしながら、やはり新製品を出した後で、苦情や問題が発生することは、まゝあることです。
そういうばあいは、いかに素早く、問題が小さい内に、設計変更などを行い、対策を立てることです。
そういう意味で市場の動向は詳しくモニターすべきことです。
 私が係わっていた製品は趣味に関連するものだったので、お客様の苦情・意見も比較的多かったように思います。
なので、新製品の苦情品は毎朝、チェックしました。そこで、実際のユーザーの意見(苦情品のコメント欄)に接して、市場の動向を推し量っていました。
 その中で、設計変更が必要と思われるものは、設計部門、製造部門と協議して、対策を立てるべきと思われるものは対策を素早く立てるようにしていました。
 そういう意味で、苦情品再発防止に努めていました。こういった行動の結果が次の新製品の未然防止、再発防止に繋がっていると思いますし、繋げていかないといけないと思います。